糖尿病の「寛解」とは
近年の研究により、2型糖尿病患者の中には適切な治療により「寛解」状態に至る方がいることが明らかになっています。医学的に「寛解」とは、薬物療法が不要な状態で血糖値が正常近くまで改善した状態を指します。
新潟大学の研究によると、いったん2型糖尿病と診断された方の中で、血糖値が正常近くまで改善し、薬が不要な状態となる方が一定の割合で存在することが示されています。具体的には約100人に1人の割合で寛解が見られるとされています。
ただし、欧米人と日本人では体型やインスリンの体内分泌量が異なるため、海外の研究結果をそのまま日本人に当てはめることは慎重に考える必要があります。
現時点では、完全に「治る」とは言わず、患者さんが医師と共に適切に血糖値をコントロールし、合併症を予防することが重要な目標とされています。
寛解が起こりやすい人の特徴
研究によると、2型糖尿病の寛解が起こりやすい方には以下のような特徴があります。
- 早期から生活スタイルの改善や治療に取り組んだ方
- 健康的な方法で体重を減らした方
- 食事療法や運動療法を徹底した方
ただし、一度「寛解」に至った場合でも、体重を適正に管理し、定期的に診察を受けることが再発予防のために重要です。寛解後も油断せず、健康管理を継続することが大切です。
糖尿病の主な治療法
糖尿病の治療には、①食事療法、②運動療法、③薬物療法の3つの柱があります。これらを適切に組み合わせることで、血糖値のコントロールが可能になります。
食事療法
食事療法は糖尿病治療の基本です。食事から摂取する糖質やエネルギーのバランスを適切にコントロールすることで、血糖値の上昇を抑えます。
効果的な食事療法を行うためには、以下の3つのステップが重要です。
- 食生活の見直し:現在の食事内容を記録し、問題点を把握します
- 治療への動機づけ:適切な食事療法によって血糖値が改善することを実感することで、継続的な治療への意欲が高まります
- 習慣化:治療を日常生活の一部として定着させることが、長期的な血糖コントロールには不可欠です
食事療法を効果的に行うためには、医師や栄養管理士による個別の指導を受けることが重要です。標準体重をもとに、職業や活動量を考慮した適切なエネルギー摂取量を設定します。
運動療法
運動療法は、体内の糖の消費を促進し、インスリンの効きを良くする効果があります。適切な運動は筋肉量を増やし、体脂肪を減少させることで、血糖値を下げるインスリンがより効果を発揮しやすい環境を作ります。
効果的な運動療法のポイントは以下の通りです。
- 有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)が効果的です
- 最大酸素消費量の40%前後の強度で、1回15〜30分程度行います
- 週に3回程度の頻度が望ましいとされています
- 消費エネルギーとして160〜240kcalを目標にします
ただし、高強度の筋力トレーニングは心臓や腎臓に負担をかける可能性があるため、必ず医師に相談した上で、個人の状態に合った運動プランを立てることが重要です。
薬物療法
食事療法と運動療法だけでは血糖値のコントロールが難しい場合、薬物療法が必要になります。糖尿病の薬物療法には、経口薬(飲み薬)と注射薬があります。
- 経口薬(飲み薬)の種類:
- インスリン分泌を促進する薬(スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬など)
- インスリンの効きを良くする薬(ビグアナイド薬など)
- 糖の吸収を遅らせる薬(αグルコシダーゼ阻害薬など)
- 糖の排泄を促す薬
- 注射薬の種類:
- インスリン製剤
- インスリン分泌を促進する注射薬
1型糖尿病の場合は、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリン分泌が枯渇しているため、インスリン注射による治療が不可欠です。2型糖尿病では、患者さんの状態に合わせて様々な薬剤が使用されます。
糖尿病治療の長期的な目標
糖尿病治療の最終的な目標は、血糖値を適切にコントロールし、合併症の発症・進展を予防することです。適切な治療を継続することで、糖尿病がない方と同様の日常生活を送り、健康寿命を延ばすことが可能です。
定期的な検査の重要性
糖尿病の合併症を早期に発見し対処するためには、定期的な検査が欠かせません。特に以下の検査が重要です。
- 眼底検査(網膜症の確認)
- 腎機能検査(腎症の確認)
- 神経機能検査(神経障害の確認)
- 歯科検診(歯周病の確認)
これらの検査を定期的に受けることで、合併症の早期発見・早期治療が可能になります。たとえ血糖値が安定していても、定期的な受診を継続することが重要です。
信頼できる医療チームとの連携
糖尿病は長期的な管理が必要な疾患です。そのため、信頼できる医師や医療チームとの良好な関係を築くことが治療成功の鍵となります。
効果的な糖尿病治療には、以下のような多職種連携が重要です。
- 糖尿病専門医:治療全体の管理
- 栄養管理士:個別の食事指導
- 看護師:日常生活の指導や支援
- 薬剤師:薬の効果や副作用の説明
これらの専門家によるチーム医療を受けることで、より効果的な糖尿病管理が可能になります。また、家族や周囲の方々の理解と支援も、長期的な治療継続には欠かせない要素です。
まとめ
糖尿病は完全に「治る」とは言い切れませんが、適切な治療と生活習慣の改善により「寛解」状態に至る可能性があります。食事療法、運動療法、必要に応じた薬物療法を組み合わせた総合的なアプローチが重要です。
早期から適切な治療を開始し、医師や医療チームと連携しながら継続的に管理することで、合併症のリスクを低減し、健康的な生活を送ることが可能です。定期的な検査を受け、自己管理を徹底することが、糖尿病と上手に付き合っていくための鍵となります。
糖尿病と診断されても、適切な治療と自己管理により、充実した日常生活を送ることができます。信頼できる医療機関で定期的に診察を受け、専門家のアドバイスを取り入れながら、前向きに病気と向き合っていきましょう。
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