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小池百合子のMOTTAINAI 中東の古くて新しい動き。100年前の地図に戻る?

2014.07.07 Vol.621

 2010年頃から始まった「アラブの春」による砂嵐は、いまだ各地で吹き荒れ、視界不良が続いています。 

 発端となったチュニジアで、大学を出てもろくな仕事にもありつけない若者の焼身自殺が「ジャスミン革命」へ発展し、23年間続いたベン・アリ政権が崩壊。エジプトでも30年以上続いたムバラク大統領が失脚し、ムスリム同胞団系のムルシー大統領が選出されました。しかし、巻き返しを図る勢力や政権交代に失望した国民とともに軍出身のシーシー大統領による政権が樹立され、安定への挑戦が始まったばかりです。

 同じ北アフリカのリビアも独裁者の名をほしいままにしてきたカダフィー大佐の殺害後も、各地の部族勢力やイスラム主義者が内戦時に蔓延した武器で闘いを続けています。

 シリアにいたっては、激しい内戦によって総人口の半分が難民化し、隣国のヨルダン、レバノンなどに大量の難民が流出しています。トルコに避難した150万人に上るシリア難民のうち約40万人は就学すべき子どもたち。アラビア語を母国語とするシリアの子どもたちはトルコ語による現地の学校では学べません。このまま教育も受けられず、スキルもなく、ただ歳を重ねるようでは、一生難民生活を送るしかなくなります。

 かのスティーブ・ジョブスは父親がシリア人です。留学先のアメリカで知り合った女性との間に生まれました。もし彼がシリアで生まれ、育っていたなら、銃を手に闘っていたかもしれません。

 私は5月にシリア難民支援議員連盟の会長としてトルコにおけるシリア難民の状況を視察し、子どもたちのための学校設立を検討しています。クラウド・ファンディングを通じ、皆様のご協力もお願いする予定です。

 シリア難民は同じく隣国のイラクにも逃れていますが、そのイラクの情勢も宗派闘争やクルド族の動きが重なり、日に日に悪化しています。

イラクでは過激なスンニ派武装集団による「イスラム国家」の樹立宣言でイラク分割が現実味を帯びてきました。

 100年前、イギリスとフランスの密約(サイクス・ピコ協定)によりオスマン・トルコ分割が行われましたが、地図上に直線で無理やり引かれた国境は現地の住民にとっては居心地の悪いものでした。1世紀を経て、世界は逆戻りをし始めたかのようです。 

 アジアも激動のど真ん中。日本もしっかりとした立ち位置を確保したいものです。

(衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI クールビズ・山の日 ライフスタイルは自分で選択

2014.06.08 Vol.619

 関東地方もいよいよ梅雨入り。

 6月1日には、群馬県館林市で36.3℃を記録し、早々に猛暑日の到来です。また、北京で40℃以上を記録した中国の熱波の影響で、北海道で真夏日が続くなど、予想できない動きが出ています。

 では、今年の夏はいったいどうなるのでしょうか。消費税率アップ後だけに、気温が影響する景気動向も気になるところです。

 様々な観測を総合すれば、今年は5年ぶりにエルニーニョ現象の発生が予想されています。

 エルニーニョは、東太平洋の赤道周辺で海面水温が上昇する現象のこと。西太平洋では、逆に水温が低下することから、今年の日本は梅雨が長引き、冷夏となる予測もあります。

 高知県四万十市で史上最高の41.0℃を観測するなど、うだるような猛暑となった昨年のことを考えると、冷夏は歓迎したいところです。88歳だった母も、体調を崩し、死期を早めましたし…。

 今年は、私が環境大臣として始めた「クールビズ」導入から10年。先日も、東京で開かれた国際会議の会場で、多くのビジネスマンから、「小池さん、ありがとね」と声をかけられました。10年が経過し、誰が始めたかも忘れられるほど定着している中で覚えてくださっている方もおられるのか、と感激。

 ただ、5月1日からの「クールビズ」、6月1日からのアロハもOKとする「スーパークールビズ」の仕分けはワタクシ的には、いまだにしっくりきません。

 そもそも意識改革を起こし、一人ひとりのライフスタイルを見直しつつ、気候変動への配慮を呼び起こすことが、当初の目論見でした。「政府が個人の服装にまで口を出すのは気色悪い」と批判もありましたが、そうでもしなければ、地球温暖化対策が進まないことから始めた一種のショック療法です。

 これまでの社会的呪縛から逃れ、暑ければ「クールビズ」「スーパークールビズ」にすればよいのであって、日にちを決めて、それに「従う」ではまだまだ呪縛からは解き放たれていないようです。

 先日、2016年から、毎年「山の日」として国民の祝日とする法律が成立しました。「海の日」があるなら、「山の日」があってもよいだろうと、関係者が運動した結果だとか。法律の賛否を問う衆議院の本会議場を、実は私はそっと抜けだしました。

 次は「陸の日」でしょうか。

 そもそも日本の祝日は多すぎます。7月20日を「海の日」とする際も、違和感を覚えた私です。もっと自由に休む時は休んで、有給休暇もしっかり取って、自らのスキルアップに使うなり、家族との時間を活かしたりする。みんなでへとへとになるまで働いて、みんなで一斉に休んで、みんなで交通渋滞に巻き込まれ、さらにへとへとになる。

 もういいじゃないですか。

 一人ひとりが自信をもって、自らの選択で生きてほしい。そう願っています。

(衆議院議員/自民党広報本部長)

10周年のクールビス 小池元環境相「世の中が変わったこと実感」

2014.05.30 Vol.618
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 室温28度でも快適に過ごすこと目的に服装を工夫して涼を取る、クールビズ運動が10周年を迎えた。6月1日から、そのさらに上をいく、スーパークールビズの推進期間がスタート。服装だけでなく、働き方や時間の過ごし方などライフスタイルを変える取り組みだ。

 30日、都内で行われたイベントには、石原伸晃環境相、小池百合子元環境相らが出席、今年のスーパークールビズのキックオフを高らかにPRした。

 10周年を迎えたこの運動を当初からけん引してきた小池氏は「10年でこれほど世の中が変わることがあるのかと実感しています。当初はそんな恰好をして行った上司に叱られると言われたけど、今は堂々と涼やかなビジネススタイルとして着ていただいています」と振り返った。

 石原環境大臣も、機能性素材の誕生などを例に、クールビズの運動は「経済的にも地球温暖化にもいい効果を与えた成功例」とし、今後も推奨していくとした。

 スーパークールビズは、アロハシャツやポロシャツなどを活用した更なる軽装や、比較的涼しい朝などに勤務時間をシフト・残業をしないといった効率的な働き方を推奨、さらには涼しい場所をみんなでシェアする「クールシェア」など5つの取り組みを軸に、ライフスタイルを変えていくことを呼びかけるもの。

 今年はまた、低炭素社会の実現を目的とした新しい気候変動キャンペーン「Fun to Share(ファン・トゥ・シェア)」とも連動。クールビズを定着・進化させていく。

 イベントでは、「ベストクールビズ大賞」の授賞式も行われ、剛力彩芽と田中圭が受賞した。

小池百合子のMOTTAINAI「両国に必ずプラスとなる日本とクウェートの連携」

2014.03.16 Vol.613

 東日本大震災から3年。
 今年も3月11日に天皇・皇后両陛下のご臨席のもと、三周年追悼式がしめやかに行われました。被災地を代表しての、3名のご遺族の弔辞は、壮絶な内容ながらも、静かに、淡々としたもので、それが、かえって会場の涙を誘っていました。
 民主党政権下で行われた1年目の追悼式では、皇室のお迎えもおざなりでした。外交団による指名献花では、200億円にも上る巨額な被災地支援を国民規模で行ってくれた台湾の代表者が外されるなど、問題が相次ぎました。
 3回目の追悼式は学習効果というよりは、安倍政権の細かな気配りが随所に見えました。皇室のお迎えも自然と起立で行われ、外交団などの献花も、大使を務めた期間順と、整然としたものでした。
 特に目を引いたのが、クウェートの議員団による献花が行われたことです。4名の国民議会議員が長い民族衣装に身を包み、献花をするさまは迫力がありました。
 クウェートは東日本大震災発生後、もっとも多額な支援を寄せてくれた国です。中身は原油500万バーレルの贈与や三陸鉄道南リアス線への車両3台など、太っ腹なもの。原油は日本全体の原油消費量の2日分、約400億円に相当します。台湾の支援額の倍にあたります。
 おりしもクウェート・日本友好議員連盟の皆さんが議員交流のために来日されていたことから、追悼式への出席が叶いました。50年以上の友好関係にあるクウェートの対日支援について、日本国内はもとより、クウェート国内でもあらためて認識してほしいものです。
 クウェートと日本の共通項は70〜80年代末ごろにかけ、それぞれの地域で光り輝いていたことです。クウェートは湾岸アラブ諸国でもいち早く開発が行われ、おしゃれな店やレストランが軒を並べるなど、憧れの国ではありました。政治が安定し、経済も順調、社会も活発でしたが、イラク・イラン戦争、湾岸戦争と地政学上も不安定になりました。いち早く民主化したものの、頻繁に選挙や内閣改造が行われ、首相や大臣がころころ替わる。産油国のクウェートで石油大臣の椅子が何か月も空席であったことも幾度かありました。
 クウェートの内なる戦いが続いている間に、まわりのアラブ首長国連邦(アブダビ、ドバイ)やカタールなどがスイスイと追い抜いていったということでしょうか。
 両国の議員連盟(日本側会長は小池)として、お互いにもう一度光り輝く国になるために、しっかり連携してくこととしました。
 けっこういいコンビになるかもしれません。

(衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI 「政治には不可欠な国家的大義と国民の共感」

2014.02.17 Vol.611

 東京都知事選挙は、事前の予想通り舛添要一氏の大勝利で終わった。記録的な大雪まで味方につけた舛添氏だが、ホッと一息つく暇もなく、仕事に取りかからねばならない。
 東京五輪の準備をはじめ、福祉、教育、そして日本のエンジン役として首都東京の経済再生など仕事は山積みだ。
 一方、三位に甘んじるという不本意な結果に終わった細川・小泉元首相連合だが、なごり雪は存外根雪となって、ますます小泉純一郎の思いに火をつけたように思う。
「脱原発」、「原発即ゼロ」で自ら再稼働を始めた小泉元首相にとっては、にわかに起こった都知事選挙は絶好のPRの機会でもあった。勝てばベスト。負けても、主張を訴えるチャンス・・・。05年の郵政選挙で見せた、あの小泉首相の執念が急に萎むとも思えない。
 しかし、その動きがメディアが期待するような、新党結成、政界再編につながるとは思えない。「政権交代」の旗印の下だけに集まり、大失敗に終わった民主党の例もある。
 ワンイシュ—政治は、結局、複雑な国家運営にはかえって障害になることがある。
 もう一つの選挙、東京に次いで、今後は大阪の市長選が巻き起こった。
 こちらも「大阪都構想」というワンイシューを巡る動きだ。
 一時は、その一挙手一投足に注目を集めた橋下徹氏だが、突然の大阪市長辞任に、多くの人が冷めた眼差しを向けている。橋下氏の発言を読み解くならば、むしろ政治に飽き飽きといった感が漂っている。本当に橋下氏が再出馬するかも疑わしくさえ思う。
 私は政治は、国家的大義を掲げつつ、国民の共感を得るアートだと考えている。どんなに立派な大義があっても、国民の共感なしには成し遂げられない。人々の共感を得ても、大義が伴わなければ、ポピュリズムに陥る。
 脱原発も都構想も大義はあれど、マジョリティーの共感を呼び起こせてはいない。都知事選の結果は、その一つの証左だろう。
 増税など、共感どころか、反感につながりやすい政策も、ていねいに説明して、大義につなげる作業が不可欠だ。
 元首相や前市長と、出入りが激しい政治の世界だが、国民の多くは政治の安定と経済再生に大義と共感を見出しているに違いない。

 (衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI 「北朝鮮の真の実力者はいったい誰かを見極めることが必要」

2013.12.23 Vol.607

 冷戦時代、「クレムリノロジー」という言葉がありました。鉄のカーテンのむこうで、何が起こっているのかを知るすべのひとつを言います。
 赤の広場のレーニン廟の壇上から閲兵する指導者たちの並び順から、ソ連共産党中枢の動きを判断するのです。
 12月17日、金正日総書記の2周忌追悼大会のひな壇には、5日前に「国家転覆陰謀行為」により死刑判決を受け、即日処刑された正恩義の叔父にあたる張成沢前国防委員会副委員長が消えた後、崔竜海軍総政治局長の存在がひときわ目立ちました。米韓を威嚇する崔竜海総政治局長の演説はまるで彼のデビューの場のようでした。
 残酷な方法で粛清されたという張成沢前国防副委員長は金正日政権の若き後継者・正恩第一総書記の後見人と目され、中国との経済交流の窓口として実質的に北朝鮮№2とされてきました。
 しかし、これまでのクレムリノロジーが、ソ連内部の不透明性ゆえに、勝手な解釈をまことしやかに喧伝する手段であったように、北朝鮮内部の真実は明確ではありません。
 そもそも、張成沢氏が本当に№2だったのでしょうか。彼はあくまでも金正日総書記が唯一血を分けた妹である金敬姫の夫だったからこそ、金王朝で居場所を確保できたにすぎません。その如才なさゆえに、妻と別居状態が続いていながらも、その立場を失うことはありませんでした。また、中国にとって都合のよい交渉役であったため、張成沢氏を持ち上げ、世界も張氏に注目したのでしょう。
 北朝鮮をウォッチするにおいて、絶対に外してはいけないポイントが二つあります。ひとつは、朝鮮民主主義人民共和国という正式名称とはほど遠い「金王朝」であるということ。血脈がすべてに優先するのです。第二に金日成、金正日の二代にわたる「遺訓」がすべてを決めるということです。遺言です。
 私はかねてから、真の実力者は金正日の妹、金敬姫そのものだと考えてきました。朝鮮半島の文化からは、女性が指導的立場につくことはないとされますが、金正日総書記が病気で執務不能の際も、彼女が決済を代行してきました。
 夫が粛清された後も、敬姫の政治的な地位は確保されています。金王朝の大切な一員だからです。
 夫の粛清は、実は敬姫本人の決断だともいわれています。健康状態が悪化し、死期を悟った敬姫が、自らの死後、すでに憎しみの対象と化していた夫に金王朝を任せるわけにはいかないと考えたとしても不思議ではありません。夫への憎しみを増すように仕向けた側近もいるのでしょう。敬姫が、夫の粛清に躊躇していたとの報道もありますが、後付けのように思えます。
 問題は、彼女の死後。来年は朝鮮半島、そして東アジアに大激変が起こるかもしれません。日本も、最悪の事態に備えながら、最善の道を探りましょう。
  (衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI 「ついに実現するNSCは機能するよう賢く育てたい」

2013.11.25 Vol.605

 安倍晋三総理の悲願ともいえる国家安全保障会議(NSC)がいよいよ創設されます。7年前、第一次安倍政権で準備が進み、衆議院に提出までされたNSC法案ですが、自らの辞任やその後の政権交代などでお蔵入りとなっていたものです。しかし、安倍総理の執念ともいえる強い思いを背景に、第二次安倍政権で、ついに実現しようとしているのです。

 NSC創設には初代の国家安全保障問題担当総理補佐官として法案準備にあたった私にとっても感慨深いものがありますが、もっと早く創設されていたならばと、悔しくもあります。東日本大震災やアルジェリア邦人殺害事件、竹島や尖閣を巡る問題などの対応がより適切に行われていたのに、との思いです。

 近年の日本の安全保障環境は厳しさを増しています。民主党への政権交代を含め、不安定な国内政治が周辺国に無用なチャンスを与えてしまいました。加えて、サイバー攻撃や宇宙を巡る国際競争、鳥インフルなどの国境を超える疫病の発生など、防衛省や外務省だけでは対応できない複雑な様相を呈しています。省庁の縦割りを排し、物事が起こってからバタバタする対処療法型ではなく、より戦略的な取り組みが不可欠です。

 9人の大臣が出席する従来の安全保障会議に加えて、総理、官房長官、外務大臣、防衛大臣の4人からなるコア会議を設けます。2週間に一度くらいの割合で開く会議で、わが国の主権と国益を守るためには何をすべきかを検討します。人数を絞るのは、「船頭多くして、船、山に上る」といった愚を避けるため。そして、機微な情報の保全には、情報に接する人を制限することも必要です。

 ただ、先述したように、国家の安全保障の対象は広がる一方ですから、テーマによっては担当の大臣が加わることもあります。総理をはじめとする4人を核としつつ、柔軟にとり組むことになります。スタッフは100人規模になるとのこと。よく「小さく産んで、大きく育てる」と言いますが、規模の拡大より、小さくとも賢くあればよいでしょう。第二外務省、防衛省は不要です。

 そのためにも、国家にとって必要な正確でスピーディーな情報の入手が必要です。情報収集は外務、防衛、警察、公安などの組織が担当しますが、それらの情報をもとに、判断して結論を導くのがNSCの役目。つまり情報機関が漁師ならば、魚をさばいて盛り付けるのがNSCというわけです。

 課題は多々ありますが、まずはNSCが機能するよう、賢く育てたいものです。

(衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI 「遺品整理」

2013.10.27 Vol.603

 9月に他界した母の遺品整理をぼちぼちしています。大正生まれの母とは長年にわたってモノを処分する、しないで、しばしば衝突したものです。それも今はいい思い出です。

 衣類は私が着回しできるものはとっておき、あとは有効に処分。おびただしい服に囲まれながらも、母が実際に着ていたのは、昔からのお気に入りのもの数点でした。

 和服はタンス一竿をそのまま残しました。

 化粧品類はそのまま私が使うようにしました。それこそ「もったいない」ですから。ここ数年、外出といえば病院通いくらいでした。それも元気な時には病院へ、調子が悪いとふせるという高齢者にありがちの悪循環でした。

 書類関係は、私が海外から送った絵葉書などが大切にとってあり、あまり捨てられません。おびただしいパンフレットは墓石、墓地がらみのものばかり。最期は数年かけて、神戸の墓を東京に移す作業に躍起になっていました。いわゆる「終活」に一生懸命でした。自分で用意した墓に、相次いで夫と本人が入る結果になりました。

 それにしても、すべてにおいて「お始末」のよかった母は、最後まで自分で自分の始末をよくしたものです。この世代の人たちに共通しているのではないでしょうか。

 そこで、自分自身の回りをあらためて見回してみました。アラブ等の国々を回るたびに、王様や政府からいただいた、豪華だがとにかくかさばる記念品。専用の棚はすでに満杯です。

 写真のアルバムも何十冊とあり、キャスター時代のビデオテープは途中までDVDに移しましたが、数百本のオリジナルを処分する決心はついていません。

 山のような洋服は時折、親戚のこどもたちなどに譲っていますが、趣味が合わないかもしれません。たいした整理にはなっていません。

 ましてや選挙の用品となると、場所ばかり取りますが、必要と言えばすべて必要です。処分の対象にはなりません。

 結局、私も母と同じで、思い切った処分ができないのです。

 これまでも「断捨離」系の本を何冊も読みましたが、たいして実行できませんでした。ただ、私が母の遺品に対してしているように、私のモノも誰かが処分することになります。思い出を共有していない人からすれば、ゴミの山かもしれません。
 ならば、この際、自分の意思で処分するものは思い切って処分しようと思います。譲れるモノは譲って活用してもらいましょう。

 結局、墓に持っていけるものなど何もないのですから。そう思うと、気持がすっきりするものですね。
(衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI

2013.09.30 Vol.601

 アルベール・カミユの『異邦人』風に言うなら、「きょう、ママンが死んだ」でしょうか。

 9月16日夜、私にとってのゴッドマザー、恵美子が永眠いたしました。88歳でした。穏やかな最期でした。

 アラブへの留学、帰国後の仕事、政界入りと、人生における節目、節目で私の背中を押し、適切なアドバイスをくれた母。4カ月前に父を亡くしたばかりの私には、誰もが経験する親との別れとはいえ、母との別れは特別なものがあります。

 母は1年前に肺がんを告知されましたが、手術や化学療法での治療を希望しないどころか、「尊厳死協会に入りたい」と病いとの共生の道を選択。認知症もなく、自らの意思ははっきりしていました。

 それでも今年の夏の暑さは高齢者にはこたえました。食欲も減退し、体力が低下したことから、本人の希望もあり近くの病院に入院。しかし、病いの進行が思いの他早く、余命ひと月と宣告されたことから、思い切って自宅での静養に切り替えました。この時点で母も私も覚悟を決めました。

 それからは往診専門の先生と看護師さんのきめ細やかなケアとともに、12日間は母と私、兄家族などとの濃密な時間を過ごすことになります。

 大好きなすき焼きを食し、愛犬と戯れ、昔見た映画を鑑賞し、趣味の三味線のCDを楽しみ、さらには医師に勧められてタバコを一服し…。結果としての12日間は、母にとって、娘、息子との大切な時間となりました。

 病院で最期を迎えた父と比べると、自宅で家族に看取られて永眠した母の場合は、満足感が違います。自宅での看取りは多くが望みながらも、仕事や環境によってそうは行かないケースの方が多いことでしょう。また家族とすれば、一分一秒でも親には長生きしてほしいと思うものです。だから点滴でも、胃ろうでも、最善を尽くそうとします。そういうものです。

 ただ、そのことが本人にとって、家族にとって、本当に幸せかどうかは分かりません。病状次第ですが、本人が最期にしたいことをさせてあげるのが、本人にとって、そして家族にとってより幸せなのではないかと思うのです。

 そのためには、本人と家族の覚悟が必要です。このことが自宅での看取りの最低条件だと痛感しました。
 往診システムが過去のものと思っていた私ですが、母の最期を苦しむことなく旅立たせてくださった終末医療専門の医師、看護師にも感謝しています。

 父母の死をきっかけに終末医療や自宅での看取りのあり方を政策に反映したいと思います。 

(衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI

2013.09.02 Vol.599

「地球温暖化」は死語? 日本の外交力が試されています。

 朝晩にはようやく秋を感じるようになりましたが、今年の夏は連日猛暑が続きました。四国の四万十市では41度を記録。猛暑を超える「超猛暑」とでも名付けましょうか。

 猛暑の原因はラニーニャという大気の対流による自然現象説がありますが、地球温暖化説はあまり取り上げられません。福島第一原発の問題もあるせいか、地球温暖化という言葉そのものを避けているようにも思えます。

 しかし、どんなに日本が目をそらしたくとも、地球温暖化という世界的なテーマは存在します。

 毎年末には国際的な地球温暖化対策会議COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)が開催されるのです。19回目を数える今年はポーランド・ワルシャワで開かれます。地球温暖化対策が英国などのヨーロッパが描いた世界戦略と断じるのは簡単ですが、すでにゲームは始まっています。

 COP19では2020年までの温室効果ガス削減の新たな目標を話し合うことになっていますが、現時点で日本だけが明確な数字を示せない状況が続いたままです。3・11東日本大震災・大津波による福島第一原発事故以来、時計が止まってしまったからです。

 民主党の鳩山政権時代に20年までに90年比で25%削減!とブチ上げた直後に、不幸にも3・11が起こった。今も放射濃度の高い汚染水が海へ流れ出している状態です。今後の予定が立たない、将来が見通せないと、手ぶらで日本の環境大臣はワルシャワに旅立たねばならない状況です。

 せっかく温暖化対策で世界をリードしていたわが国が手ぶらで国際会議に臨むのはくやしい限りです。カバンの中身を詰める努力を重ねたい。

 ここは発想を変えましょう。世界の温室効果ガスのうち日本の排出分はわずか4%。、増加の一途の途上国で日本の技術を生かして削減するほうが、全体の貢献につながります。また、ヨーロッパがEUの枠組みで調整するのと同様、中国やインドを含めた「アジア枠」を作ることで、日本の貢献度を増すことも一案です。

 それを可能とさせる唯一の方法が外交力です。説得力です。

 それもかなりの力量が必要ですが…。地球温暖化対策という分野でも日本は正念場を迎えています。     
(衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI

2013.05.13 Vol.591

 2年前、アラブ各地で吹き荒れた「アラブの春」の嵐も、今や旧勢力の巻き返しなどで「アラブの冬」へ逆戻りしつつあるという悲観的な見方が広がっています。

 特に紛争が泥沼化し、内戦状態にあるのがシリアです。アサド大統領側と反体制側の戦いはサリンの使用疑惑からイスラエルの空爆まで、悪化する一方です。

 激しい戦闘から逃れるため、すでに100万人を超える人々が周辺諸国へと流出し、その数は連日、万単位で増加し続けています。

 世界では関心の強いシリア問題、難民問題ですが、日本でも支援熱を高めるため、3月に超党派によるシリア難民支援の議員連盟を立ち上げました。そしてGWを活用し、約30万人のシリア難民を受け入れている隣国、ヨルダンを訪問。17万人を収容しているザアタリ・キャンプ、2.5万人が収容可能なハラバート・キャンプを視察してきました。

 首都のアンマンから約1時間。ザアタリ・キャンプにはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のテント、サウジアラビアなど支援国の紋章の入ったコンテナ・ハウスが見渡す限りの荒野を覆っています。案内のドイツ人責任者も途中で道を間違えるほど、似たような風景が延々続いています。

 男性はシリア国内で戦闘に参加していることが多いからか、難民には女性や子供の姿が目立ちます。圧倒的な水不足から、トイレ、シャワー、そして洗濯も容易ではありません。あちこちに汚水の水溜まりができている状態です。水の確保を巡っての喧嘩も相次いでいます。

 一方で、キャンプの目抜き通りにはバラックを活用した店舗作りが進んでおり、八百屋、タバコ屋や衣服、扇風機を売る店がずらりと軒を並べています。シャンゼリゼ通りと呼ばれています。

 さすがシリア人です。アラブの中でもシリア人の商売上手は定評がありますが、どこから物資を調達してくるのやら。たくましいシリア人の本領発揮です。

 そんな中、古着の配布や共同の洗濯場支援で国際機関や難民から信頼を得ているのが日本のNGOです。親戚宅に身を寄せたり、自力で生きる難民たちの支援を続ける日本のNGOも活躍中です。

 日本NGOの代表者の皆さんそれぞれに話を聞くと、企業での職を離れ、大学院で学び、NGO活動に参加したといいます。

「給与は3分の1くらいになりましたが、やりがいがあります」

 シリア人だけではありません。

 日本の若者だって、たくましい。日本も捨てたものではないと希望を見出しました。

 シリア内戦の終結への国際的な連携とともに、日本のNGO支援の必要性を訴えてまいります。
(日本NGO支援組織:JAPAN PLATFORMへの寄付はコチラ→ http://www.japanplatform.org/programs/syria/
 (衆議院議員/自民党広報本部長)

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