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【江戸瓦版的落語案内 】七段目(しちだんめ)

2017.08.28 Vol.696
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 芝居道楽な若だんな、日常の些細なことまで芝居口調になり見得を切ったり、家業そっちのけで芝居小屋に入り浸ったり。今日も今日とて朝から芝居見物に出かけ、なかなか帰ってこない。夕方意気揚々と帰ってきたところ父親である旦那が呼びつけていろいろ意見をしても、当の本人はどこ吹く風。

 逆に「遅なわりしは拙者が不調法」と忠臣蔵・三段目の定番のセリフで返してくる。そんな息子に旦那も我慢の限界。2階へ追い払い、軟禁状態にした。しかし、そんなことでへこたれない若旦那は、相変わらず芝居の世界に没頭。「とざい、とーざーい!」と奇声を発し続けている。これにはさすがに閉口した旦那が、小僧の定吉に申し付けて、芝居の真似をやめるように命じた。

 だがこの定吉、若旦那に負けないぐらいの芝居好き。ついつい「やあやあ若だんな、芝居の真似をやめればよし…」と芝居調子で部屋に行くと若旦那、一緒に芝居をする仲間ができたと大喜び。『かな手本忠臣蔵』の七段目・祇園一力の場面をやろうと言い出した。自分が平右衛門、定吉をお軽に芝居をしようと思ったが、小僧の身なりでは気分がでない。

 そこでやるからには衣装も整えようということで、箪笥から妹の赤い長襦袢を出し定吉に着せた。となると自分も気分を出すために、床の間から本身の刀を持ち出した。これに驚いた定吉「さすがに真剣はいけません。斬られたら死んでしまいます」と頼むも「決して抜きはせぬ。真剣のほうが、迫力が出るんでな。そんなに心配なら、ほれ、こうして刀の鯉口をこよりで結ぼう」と言うので、定吉は渋々了承。最初は楽しくやっていた2人だが、平右衛門が、妹・お軽が仇討ちを知ったことから、その本懐のために可愛い妹を手にかけるという場面で、どんどん気持ちが盛り上がる。「妹、命は貰った!」と叫んで真剣をつかむとじりじりと定吉の方に。

「若旦那、それを抜いちゃいけません」という声も耳に入らぬよう。こよりなど、とっくに切って、刀を振り回した。定吉、たまらず逃げ回り、そのはずみに階下へゴロゴロと転落。旦那が慌てて「定吉、大丈夫か?」と聞くと「私には勘平さんという夫のある身」とまだ芝居の続き。「馬鹿野郎。小僧に夫があってたまるか。変な格好をして、さてはあの馬鹿と芝居の真似をして、てっぺんから落ちたか」「いえ、七段目」

【江戸瓦版的落語案内 】湯屋番(ゆやばん)

2017.08.04 Vol.695
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 道楽の末、親許を勘当された若旦那が、出入りの大工・熊五郎宅の二階に居候をしていた。働きもせず、毎日ゴロゴロと寝ている若旦那に、熊五郎が奉公でもしてみたらと進めた。しばし考えてた若旦那、熊五郎の知り合い湯屋が奉公人を募集中と聞き、乗り気に。紹介状を持ち湯屋に行き戸を開けるなり、女湯に飛び込んだ。驚いた湯屋の主人、とりあえず外回りを頼むというと「いいですね。芸者を連れて温泉地の視察ですか」ととぼけた答え。燃料にするための木屑集めだと言うとキッパリと拒否。

「そんなことより、番台に座らせて」と図々しいことこの上ない。その強引さに仕方なく主人が昼飯をとる時間に、代理で座らせる事に。ところが、男湯には客がいるが、女湯は空っぽ。しかも男湯の客といえば、汚いケツで、おまけに毛がびっしり野郎ばかり。そんな現実から妄想の世界へ…。

そのうちに、いい女がやって来るんだ。その女がなんとこの俺に一目ぼれ。連れの女中に「あら、ごらんなさい。ちょいと乙な番頭さんだね」。うしし…照れるなー。ある日偶然その女の家の前を通りかかると女中が目ざとく見つけ、「姐さん、憧れの君、お湯屋の番頭さんですよ」って家の中に声をかけるね。すると女は、泳ぐように出てきて、「ちょっと上がっていって下さいな」って俺の腕をつかむんだ。

「いえ、それは困ります」「いいじゃないですか」「いやいや、それは…」と一人で手を引っ張ったり、引っ張られたり。「おいおい、番台に変な野郎がいるぜ」と、客が集まりだしてきた。そんなことにも気が付かず、一人芝居はエスカレート。家に上がり込むと、2人は盃をやったりとったり。その時ちょうどいいタイミングで雷が落ち、女は癪を起して気を失ってしまった。

そこで、盃洗の水を口移しで飲ませる。すると女は目を開き「今のは嘘」。ここでさらに芝居がかり、「雷様は恐けれど、二人がためには結ぶの神」「うれしゅうございます。番頭さーん」「馬鹿野郎、いい加減にしろ!」とうとう客がブチ切れた。「俺は帰る! 下駄はどこいった?」すると若旦那「はて? 見当たりませんね。じゃ、そちらの高そうな下駄を履いてお帰りなさい」「ほかの人の下駄じゃねえか。履いてったらそいつが困るだろう」「いえ、順に履かせて、しまいの人は裸足で帰らせます」

【江戸瓦版的落語案内】紺屋高尾(こうやたかお)

2017.05.22 Vol.691

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

落語の世界にいらっしゃい!「落語ワンダーランド」

2017.04.25 Vol.689

“落語がブームだ”と言われ早十数年。今やブームではなく、余暇に落語を楽しむのがフツーになりつつある。かどうかはさておき、そこかしこに落語ファンを見つける事ができる。落語に興味を持ったらぜひ手にしてほしい一冊「落語ワンダーランド」が発売になった。春風亭昇太や春風亭一之輔といった、現在の落語ブームの先頭を走っている若手落語家から、大名人柳家小三治らのインタビューをはじめ、今見ておくべき落語家100人と新鋭落語家20人が大集合! 落語初心者に便利な落語の基礎知識、寄席・定席ガイド、落語のネタ紹介など盛りだくさん。さらに、気軽に楽しめる落語会案内、寄席デートの紙上シミュレーションなど、役に立つ実践的ガイドも満載。上方落語についての解説や噺家案内も。落語ファンも未来の落語ファンも楽しめる落語バイブルだ。

 

【江戸瓦版的落語案内】王子の狐(おうじのきつね)

2017.03.13 Vol.686

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

落語界の裏側、全部バラします『そこでだ、若旦那!』【著者】立川談四楼

2017.01.08 Vol.682

 落語立川流の真打・立川談四楼によるエッセイ。ヘヴィ・メタル専門誌「BURRN!」に連載したコラムから抜粋し、加筆訂正し再構成した。著者は、いくつもの連載コラムやエッセイを新聞・雑誌等に持っている(持っていた)ほか、小説も多数出版するなど作家としても人気の落語家である。そんな談四楼が、自分の所属する立川流、そして師匠である立川談志の事はもちろん、落語会の裏話を赤裸々に暴露。例えば、弟子が師匠を殴り廃業した事件。話はそこで終わらず、その弟子はスルーっと別の団体の師匠のもとに行き、落語家を続けている。閉鎖的なところもある落語界での、この出来事は、ファンも何がどうなってそうなったのか分からないところがあったものの、何となく“そういう事もありなんだ…”とうやむやのままになっているのが現状だ。しかし、この本にはその師匠と弟子、引き取った師匠の実名のほか、事の顛末が詳細に書かれており、思わず“そういう事だったんだ”と納得させられる。もやもやしていた落語ファンは膝を打ち、落語を知らない人は、その人間関係や協会間の微妙なパワーバランスに驚きつつも、興味深く読める。また、談志をはじめ亡くなった落語家についても書かれているのだが、改めて読むと若くして亡くなった落語家がなんと多い事か。しかし、談志以外の落語家の多くは話題にもならないばかりか、新聞でもほんの数行の訃報記事しか出ない。談四楼は先輩、同期、後輩として彼らを身近に見ていた者として、それぞれの生きざまに優しい目を向ける。そんな魅力的な落語家の噺を聞きに、寄席に足を運びたくなる一冊。

【定価】本体1500円(税別)【発行】シンコーミュージック・エンタテイメント

【江戸瓦版的落語案内 】心眼(しんがん)

2016.06.27 Vol.669
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 浅草馬道に住む按摩の梅喜(ばいき)が憔悴しきった面持で、横浜から帰って来た。女房のお竹が訳を聞くと横浜の弟から「また食いつぶしに来たな。この穀つぶしのメクラが」と言われたのだと告白。幼くして両親を亡くした梅喜が親代わりとなって育てた弟だったから、その悔しさ、怒りは計り知れない。いっそ、弟の家の軒先で首をくくって死んでやろうかとも思ったが、お前が悲しむと思い帰って来たと。それを聞いたお竹は、「茅場町の薬師様に願掛けをしに日参し、片方だけでもいいから目が開くように信心しましょう。私も自分の命を縮めてもいいから、一緒に願をかけます」と言ってくれた。そして満願の日—。薬師へ詣での帰り道、得意先の上総屋の主人が声をかけてきた。「梅喜さん、目が開いてるじゃないか」はっと気が付くと、なるほど見えている。しかし、目が開いたら開いたで帰り道が分からなくなってしまい、上総屋さんに手を引いてもらいながら帰ることに。途中、人力車に乗るきれいな芸者を見て上総屋の主人に「うちのお竹とどちらがきれいでしょうね」と尋ねると「本人を前にして言うのは気が引けるが、あれは東京でも指折りの芸者、そしてお前さんの女房のお竹さんは、東京で指折りの醜女だ。しかし、大変気立てが良く、日本でも指折りの貞女だ」。がっかりした梅喜だが、ふと気が付くと上総屋の主人とはぐれてしまった。途方に暮れていると芸者の小春に声をかけられた。前から男前の梅喜が気になっていた小春、富士横丁の待合に梅喜を誘った。杯をさしつさされつしていると小春が「ずっとお前さんのことを思っていました」と告白。舞い上がった梅喜は「お竹とはきっぱり別れて、お前さんと一緒になる」と怪気炎。そこへ、梅喜の目が開いたことを上総屋から聞いて駆けつけたお竹が乗り込んできた。いきなり梅喜につかみかかると「こんちくしょう、この薄情野郎!」「お、お、お竹、勘弁してくれ。手を放してくれ」。しかしお竹がさっきより強く首を絞めると「く、く、苦し…」と絶命寸前の梅喜。その時「梅喜さん、梅喜さん。起きておくれ」と声が。ハッと我に返ると、「夢だったのか…」「どうしたんだい。ずいぶんとうなされていたようだけど」「お竹、俺はもう信心をやめるよ」「なぜさ」「目が見えないって妙なものだね。寝ているうちだけ、よおく見える」

【江戸瓦版的落語案内】味噌蔵(みそぐら)

2016.06.13 Vol.668

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

【江戸瓦版的落語案内】妾馬(めかうま)

2016.05.23 Vol.667

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

もっとお笑いを楽しんで!落語会や新喜劇などに日本語と英語の字幕導入

2016.05.08 Vol.666

 

 吉本興業は『桂文枝「字幕」落語会』、吉本新喜劇と世界のパフォーマーがコラボレートする『THE 舶来寄席2016東京公演』を同時字幕つきで上演することを2日、都内で発表した。テレビの字幕放送に使われているシステムを劇場に持ち込むもので、演者を邪魔することなく、ほぼタイムラグなしで字幕で楽しめる。

 吉本興業にとって自社で企画制作するライブを海外の人にも楽しんでもらうことは長年の課題。また海外から日本を訪れる観光客が増えるなかで、「日本のショーを見てもらうという文化を作りたいと思っていた」(よしもとクリエイティブエージェンシー)。

 英語を始めとした多言語の同時字幕の導入は言葉の壁を取りはらう第一歩。英語字幕用翻訳を担当するチャド・マーレンは、「発想、日本のお笑いであること、そして間。お笑いには3つの要素があると思います。頑張って字幕を付けていますが、日本人が面白いというのが伝わっていない」と悔しげ。今後も引き続き頑張っていくと意気込んだ。

 桂文枝は「笑いを共有できればどれだけ素晴らしいでしょう。笑えば諍いも無くなるわけですから今回の取り組みに全身全霊をかけて挑むつもりです」とコメント。字幕システムを体験した弟子の桂三四郎は「字幕が吹き出しになって、顔の右、左に出るのは分かりやすくていいですね。話している人が変わったというのがすぐ分かる」と、感心。新喜劇のメンバーも「自分のセリフに色付けがされているので、人数がたくさんになっても分かります」とうなずいていた。
 よしもとクリエイティブエージェンシーによれば、今後、日本語はもちろん英語、他の言語にも順次対応していきたいという。また、よしもとの劇場にこのシステムを導入したい考えだ。

 

【江戸瓦版的落語案内】金明竹(きんめいちく)

2016.04.23 Vol.665

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

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