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あの名作落語にはこんな続きがあったのか—?『えんま寄席 江戸落語外伝』

2016.02.22 Vol.661

 落語好きなら一度は思う「あの噺の続きは?」「あのサゲ(オチ)はなんか腑に落ちない」といった着想からヒントを得た『えんま寄席 江戸落語外伝』。「芝浜」「子別れ」「火事息子」「明烏」という落語の名作の登場人物が死んだあと、地獄の入り口で閻魔様に天界行きか地獄行きかを裁かれる時に、落語には出てこなかった“その後”や“サイドストーリー”が明らかになっていくという構成。これが、目まぐるしく変わるストーリー展開と、人物たちの意外な関係性により、話がどんどん膨らんでいき、実に面白い。

 酒癖の悪い旦那を更生させ、立派な魚屋にした「芝浜」の女房。大店の女将としてその後も旦那を支え続け、めでたしめでたしとなったのか…と思いきや、閻魔様があの落語のサゲとなったその後の顛末を暴き、実はこの夫婦の関係は落語のようなものではなかったことを白状させる。さらに、実はこの女房「火事息子」の藤三郎とも何かしらつながっていて…と、一話完結ではあるものの、他の章のストーリーにもつながっているというなんとも高度な技で、ぐいぐいと引き付ける。

 そして第4席「明烏」の浦里の章では、「明烏」のほか、「品川心中」「幾代餅」「五人廻し」「三枚起請」「紺屋高尾」といった要素がふんだんに散りばめられていて、落語ファンなら思わずニヤリとしてしまう。もちろん、落語を全然知らない人でも楽しめる地獄エンターテインメント(?)なのでご心配なく。逆にこの本を読めば、落語に興味が出てきて、これらの噺を聞きたくなるかも。本を読んでから、落語を聞いて、また本を読むと1回目の読後とは違った楽しさを発見できるはず。

『えんま寄席 江戸落語外伝』著者:車浮代
【定価】本体1500円(税別)【発行】実業之日本社

『柳家三三、春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、三遊亭白鳥「落語家」という生き方』著者:広瀬和生

2016.01.23 Vol.659

 同書は東京・世田谷区の北沢タウンホールで行われた「この落語家を聴け!」におけるインタビューを採録したもの。「この落語家を聴け!」はロング・インタビュー付きの独演会という形式で2012年7月から2013年7月(シーズン1)、及び2014年3月から2015年10月まで(シーズン2)の期間、ほぼ月に1回のペースで行われていた。今回登場する5人の落語家は皆、シーズン1、2の両方に出演しているため、インタビューは2本ずつ掲載。落語会には今を時めく春風亭昇太や柳家喬太郎、春風亭百栄のほか、落語協会最年少会長、柳亭市馬や橘家文左衛門など錚々たる噺家が登場。

 その中でこの5人を選んだ理由として著者は「2010年代」を象徴する一冊にしたいと考えたからと語る。そのキーワードは「自然体」。「自然体」な落語を代表する演者が一之輔であり、白酒であり、兼好であると。そして古典の伝統を守る三三と奇想天外な新作の白鳥という「両極端な二人」も、昔の「古典派」対「新作派」のような図式とは異なる2010年代らしい「自然体」を感じさせる演者だという。そういわれれば彼らの落語を一言で表すと「自由」という言葉が浮かぶ。もちろん、彼らなりの落語の形をきちんと持ちつつだが、実に伸び伸びと楽しそうに落語に向き合っている。そんな彼らが、下積み時代のこと、師匠からの教え、ブレイクのきっかけや落語家としての苦しみ、楽しみを語る。とはいっても笑わせてなんぼの噺家。しかもトークの採録なので、思わず笑ってしまうので、電車で読む時は要注意。

『柳家三三、春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、三遊亭白鳥「落語家」という生き方』
【定価】本体1700円(税別)【発行】講談社

江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 天災(てんさい)

2014.09.28 Vol.627

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 小言幸兵衛(こごとこうべえ)

2014.09.15 Vol.626

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

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