新型コロナウイルス感染症の影響に揺れた出版業界。大手取次会社のトーハン・日販が発表した2020年の年間ベストセラーから、昨年売れた本について総括する。
総合ランキングでは、人気コミック「鬼滅の刃」の小説版『鬼滅の刃 片羽の蝶』『鬼滅の刃 しあわせの花』『鬼滅の刃 風の道しるべ』(吾峠呼世晴/矢島綾、集英社)がランキング上位を席巻。コミックス最終巻を含めまさに「鬼滅の刃ブーム」に沸いた一年と言えよう。そのほかにも『あつまれ どうぶつの森 完全攻略本+超カタログ』(ニンテンドードリーム編集部、徳間書店)、『あつまれ どうぶつの森 ザ・コンプリートガイド』(電撃ゲーム書籍編集部、KADOKAWA)が人気を集めた。これは緊急事態宣言下で「おうち時間」が増えたことによるゲーム需要が後押ししたものだろう。
新書・ノンフィクション部門では、人種も貧富もごちゃまぜの「元・底辺中学校」に通う息子とその母である著者の日々を綴り「Yahoo!ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞」を受賞した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ、新潮社、写真左)と、児童精神科医である著者が医療少年院で出会った非行少年たちの「境界知能」に焦点を当てた『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治、新潮社)が上位にランクイン。どちらも息の長いロングセラーでもある。
単行本・フィクション部門は、再会すべきでなかった男女の新たな人間関係への旅立ちを描き、「2020年本屋大賞」を受賞した『流浪の月』(凪良ゆう、東京創元社、写真右)。常識では計り知れない男女の絆と繊細な心理描写に、絶賛の声が多い。
トーハンでは初めて写真集部門の順位を発表するなど、昨年もヒットの続いた写真集。田中みな実1st写真集『Sincerely yours…』(田中みな実、宝島社)は累計発行部数60万部を突破する驚異的な売れ行きで他を圧倒。従来の男性ファンに加え、女性ファン層を獲得することが近年の写真集ヒットのカギを握っているようだ。
年明け早々緊急事態宣言が再発出されてしまった2021年。改めて未読のヒット本のページをめくって過ごしてみてはいかがだろうか。