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ESPの工場見学で轟音ほとばしり、職人の愛に感服する回!〈徳井健太の菩薩目線 第232回〉

2025.02.10 Vol.Web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第232回目は、ESPを見学した話について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 

 ご縁をいただき、ESPの工場を見学させていただいた。こんなに愛がほとばしる会社があるなんて思いもしなかった。

 ESP(本社:千代田区神田錦町)は1975年に日本で設立された、高級ギターを中心とする楽器製造会社だ。世界初の本格的なオーダーメイド・ギターメーカーとして誕生し、エレキギターでは国内トップシェアを誇る。国内外のトップアーティストから高い信頼を得ているため、僕の中ではGibsonやFenderなどと並ぶ超有名ギターメーカー。そう言えば、北海道から上京したとき、音楽を演っていた友だちは、ESPの専門学校に入るために故郷をあとにしたっけ。

 世界的なメーカーだから、「大きな工場なんだろうな」と勝手に思っていた。ところが、埼玉県某所にあるESPの工場は、立派ではあるものの町工場のような雰囲気もあって、ちょうど昼休み中だった社員の人たちは、ヨーヨーで気分転換を図っていた。こんな牧歌的で、昭和の一コマみたいな風景が広がる工場なのかと、僕の期待はカミナリに打たれ、そのギャップに頭の中でギターの轟音が鳴り響いた。

 ESPはオーダーメイドでギターを作るから、僕は車を作るようにオートメーションで製造を担い、一部分だけを手作業で進めるものだと想像していた。でも、実際にはすべての工程が職人さんによる手作業で進められ、機械だけで手掛けられるというプロセスは一つもなかった。

 ギターのネックやボディーとなる木材が、メイプル剤を筆頭にたくさん並んでいて、選択された木材が削り出される。フレットを打ち、塗装し、ペグなどのパーツを取り付ける。それぞれの工程を分業で職人さんが担当し、そのひとつひとつは信じられないほど丁寧な手作業によって、魂が吹き込まれていた。

 僕が今まで楽器店で目にしてきたESPのギターは、こうやって生み出されていたのかと息をのんだ。案内をしてくれた方に話を伺うと、この工場だけで製造も修理も行うという。一体、今日だけで何度カミナリに打たれるのだろう。

 たとえば、湿度によってギターのネックは必ず反ってしまう。それを直すためには、高熱のアイロンのような機械で押し当てるしかないらしく、そうした不備をきたしたギターは、すべてこの工場でリボーンされるという。

 僕は途中から『タモリ倶楽部』よろしく、ロケをするようにギター製造についてあれこれと質問していた。いるだけで好奇心がわいてくる。なんでも、ここでギターの製造にかかわっている人は、ESPの専門学校出身者もいて、基本的に全員がギターが弾けるんだとか。

 職人さんたちのデスクに目をやると、一つとして同じものがない。「なんでデスクがみんな違うんですか?」と尋ねると、各々のテーブルは手作りだといい、自らのテーブルを作るところからスタートすると教えてくれた。おそらく、使えない木材を再利用して作っているのだろう。形も色もバラバラ。それぞれの個性が大爆発。だけど、ギターを作るという思いは一致する。なんて素敵な社風なんだろう。

「人によってはメタルを爆音で聴きながら塗装したりもしていますよ」

 そんな言葉を聞いて、僕の心はとてもウキウキした。自分の作業と向き合うために、その人が好きなものに包まれることを推奨する。音質チェックをするときは話は別だろうけど、それぞれがそれぞれの仕事をしているときは、各人が思い思いの音楽を聴きながらギターを作り上げる。

「こんなに愛にあふれた会社があるんですね」と感心する僕の声をよそに、黙々と目の前のギターと向き合っている職人さんたち。でも、案内してくれた方は、「振り向きこそしないですけど、きっと徳井さんの言葉を聞いて、スタッフも喜んでいますよ」と笑って話す。いえいえ、感謝を言うのは僕の方で、こんなに素晴らしい場所を見学させていただき、本当にありがとうございます。

 立場も業務も異なる。だけど、ギターを愛するという共通理念がある。“みんなちがって、みんないい”は、こういうことを言うんだろう。

「ここまで愛に満ちていたら、ライブパフォーマンスでテンションが上がったとはいえ、ギターをぞんざいに扱われるのは嫌じゃないですか!?」

 少し意地悪な質問だろうけど、聞いてみたくなった。「いやいや、大丈夫です」とESPは明るく返す。愛にあふれた組織は強く、かっこいい。ESPさん、とても勉強になりました。ありがとうございました。

かまいたち山内「外したら実家売る!」背水の陣で新しいバームクーヘンをPR! 濱家は「大人の男性も好き」と太鼓判

2025.01.30 Vol.Web Original

 お笑いコンビのかまいたちが1月30日、都内で行われた、新しい焼き菓子「BAUM CHOCOLAT DE VOYAGE」(バーム ショコラ ド ヴォヤージュ)の発表会に登壇した。

 関西先行で発売し1日で約1万2000個を売り上げたという人気の商品。販売する株式会社クラブハリエの「バームクーヘン」や「リーフパイ」は、かまいたちも大阪時代から親しみがある商品で大ファンだといい、コンビのYouTubeチャンネル「かまいたちチャンネル」の企画で紹介したこともあるそう。

 それゆえに登場から、山内健司は「バームクーヘン山内」、濱家隆一は「リーフパイ濱家」への改名を宣言して、新商品をアピールした。

 

パンサー尾形が新中野の商店街を竹馬散歩「好きですわ、この街が!」

2025.01.23 Vol.Web Original

 竹馬に乗って街を巡る新感覚街ブラ番組『パンサー尾形の竹馬散歩』(TOKYO MX、毎月第4土曜 18時)の最新作が1月25日に放送される。

 番組は、番組のタイトルが示すように、お笑いトリオ、パンサーの尾形貴弘が竹馬に乗って商店街を巡るもの。活気を取り戻したい商店街を盛り上げるのが目的で、商店街を歩き、商店街の人や行き交う人たちと会話を交わしたりしながら、商店街のいいところを探す。

 第18弾となる今回は、尾形の自宅も近い東京メトロ丸ノ内線の新中野駅近くの商店街が舞台。老舗豆腐店で作りたての揚げたて油揚げを竹馬に乗ったまま試食して大興奮したり、演劇俳優をしていた夫婦が営む定食屋では“たけ~うま”(高くて美味い)なグルメを堪能して、夫婦と即興演劇に挑戦したり。さらに人助けに奮闘する謎の忍者と遭遇し、なぜか商店街のフォトコンテストに参戦するなど、笑いあり、感動あり、サンキューありの30分を届ける。

令和ロマンが今年もキャリア祈願! 去年と同じボケのくるま「縁起がいいからね」

2025.01.18 Vol.Web Original

 お笑いコンビの令和ロマンが1月18日、渋谷区のSHIBUYA CASTに登場した「キャリア祈願神社2025」のイベントに登場、自身の2025年のキャリアアップを祈願した。

 寒空の下で2人を待ちわびていたファンに迎えられて登場。座って待っているファンの姿に、くるまは「寒そう過ぎないですか?地べたじゃないですか……環境終わってる」。ケムリも「……厳しい環境ですが、お願いします」とあいさつ。

 昨年に続き、2年連続でのイベント出演。司会者からイベント開始の2時間前から待っていた人がいると伝えられると、ケムリは「……コミケじゃないんだから」と少しうれしそうだった。

 漫才日本一を決める『M-1グランプリ』2連覇を改めて祝う来場者の“鳴りやまない拍手”のなか、イベントはスタート。鏡割り、参拝、絵馬の発表に、来場者が参加しての「キャリアおみくじ」、公開キャリア相談、複数パターンのフォトセッションとメニュー盛りだくさんのイベントで、令和ロマンの2人も「さくさく行きましょう!」。途中、強い風が吹き、「激寒!帰ろう! 今帰っても誰も責めない!」(ケムリ)、「帰ってもおかしくない!」(くるま)というほどの寒さも手伝って、スピード感と笑いにあふれるイベントになった。

 昨年に引き続き、キャリアにおける2025年の願いをしたためた特大絵馬も公開。

「旅番組」としたのはケムリ。「僕、旅番組がめちゃくちゃ好きで、ぜひ出たいってあらゆるメディアで言ってるんですけど、こんなに言ってまだ何もが話がこないんです。今年はぜひやらせてもらいたい」。くるまが「『クレイジージャーニー』(から)は来てないの?」と聞くと、「…『クレイジージャーニー』は来てないよ! あれ、旅番組だと思っていない」ときっぱり。昨年の祈願したのは冠番組だった。

 一方、くるまが祈願したのは「共通テスト、8割!」。昨年このイベントに出演した時に「共通テスト、7割」と絵馬にしたためた。「……そういうお笑いがあったんですよ」としたうえで発表した今年の8割も薄めの反応で「これ言わない方が良かった」と本人。ケムリが「1年間勉強して1割上がったのか知らないけど」。くるまは「昨年もこれで連覇できたので、同じボケをしておいた方がいいかなって」。ケムリも「縁起がいいからね」と同意していた。

 

M-1準決勝進出30組が決定! 現王者の令和ロマン、ヤーレンズら昨年決勝進出組もコマを進める

2024.11.23 Vol.Web Original


 いま最も面白い漫才師を決める『M-1グランプリ2024』の準決勝に進出する30組が決定した。決定したのは以下の通り。

 真空ジェシカ、マユリカ、カベポスター、トム・ブラウン、ヤーレンズ、家族チャーハン、十九人、金魚番長、ナイチンゲールダンス、エバース、ドンデコルテ、シシガシラ、カラタチ、ダイタク、ひつじねいり、令和ロマン、例えば炎、オズワルド、フースーヤ、今夜も星が綺麗、ママタルト、インディアンス、豆鉄砲、男性ブランコ、ダンビラムーチョ、滝音、豪快キャプテン、バッテリィズ、 ジョックロック、スタミナパン。(エントリー順)

 準決勝は12月5日に開催。当日はイオンシネマでのライブビューイングやオンライン配信(ともに有料)も行われる。

 決勝は12月22日。

 今年は1万330組がエントリーした。

お笑いや音楽における革新と保守の関係性、の話!【徳井健太の菩薩目線 第216回】

2024.08.30 Vol.web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第216回目は、革新と保守について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 革新と保守について。都知事選の話、というわけじゃない。

 音楽もお笑いもそうだけど、自分の中で「すごく好き」とか「めっちゃかっこいい」とか思うものに、何か共通点はあるのかなって考えることがある。

 尖ったことをしている人を革新、丸みを帯びていることをしている人を保守――と仮定したとき。なんとなく自分の嗜好が整理できる。

 丸みを帯びている人たちが売れていく。これってすごいことに違いはないけれど、なんというか「すごくない」。というか、当たり前だと思うんです。万人受けするようなことをしているわけだから、当然、売れる可能性は高くなる。

 だったら、尖っている人たちが、そのまま尖ったまま売れた場合はどうだろう? これって、やっぱりすごいことなんだけど、めちゃくちゃすごいってわけでもないような気がする。尖った人たち自身に大きな変化はなく、時代が追いついたり、口コミで一気にブレイクしたり、運を含めた何かが味方したから売れたということになる。

 では、尖っている人たちが丸みを帯びた方向に寄せていって売れる場合は? ああ、僕はこれが音楽でもお笑いでも好きなんだなと思った。もしも売れたなら、本人たちの努力や「変わる」といった明確な意識が伴わなければ成立しない。プライドをバキバキにへし折られた変化が眠ってる。

 例えば、マヂカルラブリーの野田を見ているとすごいなって思う。あんなにセンスのある奴が、きちんと最大公約数に身を投げ出して、アジャストしたんだから。売れるために必要なことをアタッチメントしたり、こだわりやプライドを肉抜きしたり。改造したから売れている。

 丸みを帯びていた人たちが、ある時期を境に急に尖り始めるという逆のケースがある。正直、僕的には一番よく分からない現象だと思っている。大いなるマンネリではないけれど、ずっと大衆に向けて、大衆が求めていることをするってものすごい覚悟。地中深くに刺さってないと真似できない。なのに、「僕たちはこんなこともできます」なんて実験的なことや、求めていないことをし始めたら、「?」にもなるでしょうに。

 僕は、革新から保守に向かっていく、そんな存在が好きなんだと分かった。それを体現している音楽や笑いをリスペクトしているんだろうなって。

 昔、佐久間宣行さんが、「変わっていく人を応援したい」といったことを話していた。

 その言葉に鑑みれば、僕が足を向けて寝られない「腐り芸人セラピー」も、変わっていく過程をあぶりだした企画に違いない。板倉さんも、岩井もあんなに尖っていたのに、この企画を機に良い意味でポップになっていった。ゴツゴツしていたものが丸みを帯びていく時間の中に、ほんの少しでも僕も居れたことは幸せなこと。僕も変われたんだと思う。

「思う」なんてあやふやなのは、意識的にどうこうしようとかではなくて、結果的にそうなっていた――にすぎないから断言できない。

 若手芸人から、「徳井さん、どうやったらお客さんのウケが良くなりますかね?」と相談されても、本人たちがもがき続けてプライドがへし折られる瞬間を迎えないと、どうにもならない。

 だからいつも僕は、「好きなようにやりなよ」としか言葉を贈れない。あえてその後に添えるなら、「壁にぶつかったらまた相談しに来てね」。

 壁にぶつからなかったら、次の方向は分からない。壁にぶつかっていないなら、ぶつかるまでやってみてください。バッターボックスに立って、来た球を振る。何度も何度も振ってみて、前に飛んだり、当たったものの後ろに逸れたり、そもそも当たらなかったり、どんな結果になろうとも立つしかない。何度も振ってみたけどそれでも分からない――。壁にぶつかる瞬間が訪れます。ぶつかることを恐れちゃいけないんです。

“可愛すぎる” アンゴラ村長、初写真集『151センチ、48キロ』爆売れに「異世界転生の気分」

2024.05.24 Vol.Web Original

 お笑いコンビ「にゃんこスター」のアンゴラ村長が5月24日、初のデジタル写真集『151センチ、48キロ』(講談社)の驚異の売り上げを記念して中面の未公開カットを公開した。

“可愛すぎる芸人” 29歳アンゴラ村長、初写真集で等身大セクシー「これが私の標準体型」

2024.05.16 Vol.Web Original

 お笑いコンビ「にゃんこスター」のアンゴラ村長(29)が5月16日、初の写真集『151センチ、48キロ』(講談社)をデジタル版限定で発売した。

ぽかぽかなアジフライ弁当を待つ間、スキマスイッチさんを心底うらやましいと思った昼下がり〈徳井健太の菩薩目線第199回〉

2024.03.10 Vol.Web Original


“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第199回目は、ネタの作り方について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 

 お笑い芸人のネタの作り方はさまざまだよね、なんてことをあらためて思った今日この頃。

 我が家の近くには、お弁当屋さんがある。とても美味しいのだけれど、揚げ物などは注文してから調理をするので、アジフライ弁当なんかを頼んだ日には、15分ぐらい店先で待たなければいけない。ある意味、至福の時間。

 たまたまその日は、店内のテレビで『ぽかぽか』(フジテレビ系)が流れていて、アジフライがふっくらと揚がるまでの時間、僕はなんとなく番組を眺めていた。

 ゲストとして登場したのはスキマスイッチのお二人だった。楽曲の作り方などについてトークをしていて、なんでもスキマスイッチさんは二人で曲を作ると話していた。お笑いでも、二人でネタを作ることがある。片方が大まかな設定を考え、それを二人であーでもないこーでもないと言いながら作り上げていく。二人で作ること自体は珍しくないだろうから、特に驚きはないかもしれない。

 ところが、スキマスイッチさんは昔も今もずっと、今から手掛ける曲のテンポはどれくらいにしよう……などなど、相談しながら進め、歌詞も分担作業で作るという。正真正銘、二人でゼロから作っていくとテレビの中で明かしていた。お互いのアイデアがぶつかって、ともに譲れなくなったときはどちらも取り下げ、また新しいアイディアを考えるそうだ。

 パチパチとアジフライが揚がる音を聞きながら、僕は呆気にとられていた。

 音楽とお笑いを一緒くたに考えることはできないけど、お笑いではありえないような作り方をしているなって。めちゃくちゃ面白いことを思いついたけど、相方がそれを面白いと思わないのであれば、それを取り下げてまで新しいことを考える――これって、ものすごく信頼関係が成り立っていなければできないこと。

 自分は、その思い付きを面白いと思っている。だけど、自分が信用している相方が面白くないと思うのであれば、きっと再考する余地があるのだろうと割り切れる。スキマスイッチさん、あなた方はなんてうらやましいコンビなんでしょうか。

 僕たち平成ノブシコブシは、吉村が考えたアイデアを二人で一緒に練っていくという作り方をしていた。今となっては、僕らのネタを見たことがあるという人は絶滅危惧種だと思うけど、僕らもネタをしていたときがあったのだ。

 ネタを作るとき、僕と吉村の感性はまったく違うから、最 終的に揉めて、第三者に決めてもらうことがほとんどだった。第三者に決めてもらっているのに、僕も吉村も心の中では納得していないままそのネタをやっていたから、スキマだらけ。僕らのネタは、なんちゃって合議制のもとで作られていたけど、裏を返せば、そうでもしないと着地することができなかったってこと。

 想像している以上に、ネタは作り続けられない。衝突すれば、その分コンビに不協和音が増える。ネタ作りはリスクが大きい。そんな苦痛を伴うことを、ずっと続けることができるのは、ネタを作る才能があることに加え、相方を信頼しているからに他ならない。

 芸人のネタの作り方って、本当に多種多様だと思う。

 たとえば、同期のピースは、又吉くんも綾部もどちらもネタを作る能力に長けている。言わば、シンガーソングライター同士がコンビを結成したようなものだけど、ピースのネタの多くは、又吉くんがネタの骨格を考え、綾部が演技指導を施すといった役割分担があった。

 ジェラードンは、まず面白い設定だけを考え、その後はフリー演技で作り上げていくと話していた。彼らのYouTubeなんて、まさにその真骨頂が表れている。

 M-1を獲ったときのブラックマヨネーズさんのネタは、ラジオよろしく、実際に二人が掛け合いをする体で、一緒にネタを作り上げていったという。

 天竺鼠は、川原にアイデアが降りてこない限り、ネタが完成することはないと言っていた。単独ライブの直前になっても降ってこなければ作れない、中世の作曲家みたいな作り方。瀬下のセリフが極端に少ないのは、直前まで何も決まらないことも珍しくないからだそうだ。

「お待たせしました。アジフライ弁当になります」

 お目当ての一品を受け取ると、僕は帰路についた。いろいろな作り方がある。作られている最中は、なんだかんだで待ち遠しくて、至福の時間なのかもしれない。

令和の「つまらぬこだわりは身を縮めるだけだった」論【徳井健太の菩薩目線 第190回】

2023.12.10 Vol.Web

 

 奥さんは、シンガーソングライターをしている。若い時代に書いた歌詞が、「恥ずかしい」という。

 なんとなく分かる。僕たち芸人も、若手時代に作ったネタを、今そのままやれと言われたら、顔から火が出ると思う。

 だけど、彼女はあるとき、そんなつまらないこだわりは捨てようと思ったらしい。自分はシンガーだから、歌詞がどうであれ、歌いきることが仕事だとスイッチが切り替わったと教えてくれた。「すごいことを言うなぁ」と思った。

 若い時代は、ダサくて稚拙だ。

『ソウドリ』の「解体新笑」で、くりぃむしちゅーの有田さんと若手時代について話したことがあった。誰よりも自分が面白いと思わせたいし、誰かが笑わせるようなことを言っても簡単には笑わない。俗にいう、“とがり”が視野を狭くする。

 ある日、有田さんのマネージャーさんが、現場でめちゃくちゃ笑いを取るといったことが起きたそうだ。自分たちは、そのマネージャーを特に面白いと思ったことはないのに、現場は大ウケ。その日の自分たちよりも、明らかにマネージャーの方がウケていたと感じたという。

 マネージャーがマネージャーが笑いを取っている光景を見て、「学生時代は、今みたいな自分じゃなかったな」と思い出した。ケツを出したり、くすぐったり、そんな簡単なことでよかったのに、今はどうして難しく考えているんだろう。自分が面白いんじゃなくて、その場が面白ければ芸人じゃないのかって。

 それから、有田さんの意識は変わったそうだ。

「形」なんてないんだと気が付くと、もやが晴れる。それがわかるようになると、その場が面白くなればなんだっていいと気が楽になるし、誰かにパスもできるようになる。

 奥さんも、「形」にこだわることをやめたと話していた。形にこだわると、いろいろな可能性まで消してしまう。

 ミュージシャンは大変だ。僕たち芸人は、若手時代に作ったネタをやるとしても、部分的にアレンジすることができる。「あいつらネタを変えたな」なんて気が付くのは、一握りしかいない。

 でも、ミュージシャンはそういうわけにはいかない。歌詞や曲が記録として残っている。その曲を聞きたいファンからすれば、何かが変わってしまうことは、その人の原体験を否定してしまうことになりかねない。

 昔の曲を、あるタイミングからやりたがらなくなるのも、わかる気がする。歌いたくても歌う気にならなかったり、そのとき作った曲が今の自分と必ずしも重ならなかったり。何かを変えられないなら、押し入れの中にしまった方がいいかもしれない。売れていない頃に書いた曲は、そのまま何十年と残り続ける。そのあと、売れようが売れなかろうが、記憶にも記録にも。ミュージシャンがアーティストと呼ばれるゆえんだ。

 でも、捨てちゃいけない。そのときの感情は、いつかまた理解できる日が来るかもしれないから、昔の感情は大事に取っておいた方がいい。僕らで言えば、昔は純粋な気持ちで笑わせたいって気持ちがあったはずなのに、ある日突然、「面白いことを言いたい」といった鈍い気持ちに変わる。「笑わせたい、楽しませたい」という気持ちに戻ってこられるかどうか。戻ってくる日も、ある日突然。捨てたら、再会できない。

 僕の学生時代は、先生が嫌な顔をするような確信めいたことを言いたくて仕方がなかった。クラスメイトも、そんな自分に期待していた。

 芸人になって、いつからか面白いことを言おうとがんばったけど、それが無理だとわかった。本来自分が持っているもの、好きだったものはなんだろうと考えると、「面白いこと」じゃなくて、「確信めいたこと」をいう自分の姿だった。戻って来ることができた僕は、お笑いの分析をするようになって、今がある。とがっていたんじゃなくて、無理をしていただけだった。

 すべてをひっくるめて、自分の中で納得なのか消化なのか許容なのかわからないけれど、飲み込めたとき、形にこだわらない自分になれるんだと思う。

 

※徳井健太の菩薩目線は、毎月10・20・30日更新です。

THE RAMPAGE 陣の買い間違いエピソードにざわざわ 12日放送の『人志松本の酒のツマミになる話』

2023.05.11 Vol.Web Original


 16人組ダンス&ボーカルグループ、THE RAMPAGEのリーダーでパフォーマーの陣が12日放送の『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ系、21時58分~)に出演する。

 “お酒の席が盛り上がれば何をしゃべってもOK”というルールのもとで、普段言えないような悩みや失敗談、心に秘めた本音を語り合うトークバラエティー。陣が披露するのは、初めての海外での仕事でアメリカを訪れた際のエピソード。「生活雑貨を(現地の)コンビニで買った」そうで、その後「歯を磨いていたら、歯と歯ブラシが…」と、あるとんでもない買い間違いをしていたことが発覚したと語り、一同をざわつかせる。

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