映画『劇場版 アナウンサーたちの戦争』の初日舞台挨拶が16日、都内にて行われ、俳優の森田剛と演出の一木正恵氏が登壇。戦時中の伝説的アナウンサーを演じた森田が作品への思いを語った。
戦時中「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた日本放送協会とそのアナウンサーたちの活動を、事実を基に映像化し、そのの苦悩と葛藤を描いた物語。
冒頭、演出の一木氏は「戦時中、多くの災害が隠されていた」と、気象報道管制のもと避難に必要な台風情報が報道されず多くの犠牲者を出した歴史を振り返り、台風7号が接近中のこの日の舞台挨拶に感慨。
開戦ニュースと玉音放送の両方に関わった伝説的アナウンサー和田信賢を演じた森田剛は「戦時中を描いた作品は他にもありますけど、アナウンサーの視点を描いたものを僕は知らなかったし、周りも初めて聞いたという人が多くて。だからこそ伝えるべきだと思った」と振り返り「こういう作品を未来ある若者に見てほしいという思いがありました」。
森田をキャスティングした理由について「才能の生かし方を計算しない、和田さんと森田さんの“真骨頂”が似ているということ。そして和田さんをシンプルなヒーローではなく清濁併せもった人物として演じてほしいと思い森田さんにお願いした」と振り返りつつ「最初は、怖い人だったらどうしよう、と。謙虚な人でよかった(笑)」と語り、森田が「なかなか目が合わないなと思いました」と苦笑する一幕も。
「言葉には力があるということに信念を持っている方だった」と和田氏について語った森田。「撮影中もこのことをずっと考えていました。言葉で救われることもたくさんあるし、反面、傷つけてしまうこともある。便利で自由な時代だからこその難しさもあるけど、自分に、周りに優しくというシンプルなことなのかな、と思います」。
一木氏も「放たれた言葉というのは決して消えない。大人が守らねばならないはずの子どもたちを戦争に生かせた社会を再び出現させてはならないという思いを、皆で抱いて作った作品」。最後に森田も「これは事実の話。昔話でもなく今の話だと思っています。この映画を見て、自分や大切な人を守るため、皆さんが考える時間になれば」と思いを語っていた。