ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXの車内で突如謎の病原体のパンデミックが起こる。感染した乗客は次々と凶暴化。時速300kmで走る密閉空間のなか、絶体絶命のサバイバルが始まる…!
「実はこれまで韓国では“ゾンビ”を素材にした商業大作が作られることがほとんどありませんでした」と明かすヨン・サンホ監督。
「ゾンビとは、ゾンビ映画で描かれる恐怖とは何かと考えたとき、それは自分が変化する恐怖と、変化した自分が愛する人を傷つける恐怖だと私は思いました」
つまりゾンビ映画は家族の感動物語を描く舞台に十分に合うのだ。
「ゾンビ映画のなかの物語性をどう作るべきかと考えたとき、思い浮かべたのは是枝裕和監督の『そして父になる』でした。本作はアクション中心の作品なので、仕事一筋から、娘を必死で守る父へと成長していくエピソードをたくさん盛り込むことはできませんでしたがコン・ユさんが見事に表現してくれましたね」
舞台となるのは高速列車KTX。
「当初、KTXやコレイル(韓国鉄道公社)に協力をお願いしたんですがなかなか厳しくて。車両の設計図は機密事項なので貸してもらえず、美術スタッフが実際にKTXに何度も乗って細かいところまで計り、リアルなセットを作りました。ソウル駅は明け方に出発するという設定だったので夜間にロケをさせてもらえたんですが、その他の駅は昼間に撮影することなど不可能だったので、田舎の閑散とした駅や閉鎖された車両基地を借り、映像処理や編集を駆使して実際の駅で撮影したように演出しています。なかなか大変でしたが、完成作はコレイルもすごく気に入ってくれて、運転手役の俳優は名誉運転手に任命されました(笑)」