「911からもう16年が経ち、あの悲劇を映画化する企画も少なくなりました。そういう意味でも、これまでとは違った視点で911を描いた本作は今、映画化する意義があると思ったんです」と語るのは、2001年9月11日、NYワールドトレードセンタービルで起きた米同時多発テロ事件をビル内部に閉じ込められた人々の視点で描いた映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』のマルティン・ギギ監督。
主人公の自己中心的な実業家ジェフリーを演じるのは“お騒がせ俳優”としても注目度の高いチャーリー・シーン。
「彼に最初に会った瞬間、この人は世間から誤解されていると思いました。本当の彼はとても忠誠心にあふれた真心の人。彼と仕事をするのは今回が初めてでしたが、お互いにすごく信頼し合うことができた」
偶然にエレベーターに居合わせたさまざまな立場の人や離婚調停中の妻と力を合わせて生き延びようと、変化していく姿を真摯に演じきっている。
「劇中で明かされるジェフリーの生い立ちは、チャーリーの父マーティーン・シーンの実話がもとになっているんです。これ以外にもチャーリーはさまざまなアイデアを本作にもたらしてくれました。現場での姿勢は本当にストイックで完璧に役になりきってくれた。しかも、一個人としてもリスペクトできる人。彼は911で犠牲になった消防士の遺族のために毎年、消防士の団体に寄付をしているんです」
実は本作ではこれまで許可されたことのないNBCの記録映像を使用している。
「16年経っても我々が見ていないもの、知らないことはまだある。911は非常に繊細な題材ですが語ることを恐れてはいけないと思っています。語ることで癒され、理解が深まる側面もあるのですから」