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左利きにスイッチしたテルミン奏者・竹内正実が追い続ける、音楽の美とその力。〈インタビュー〉

2022.11.06 Vol.Web Original

 ロシア生まれの電子楽器「テルミン」を演奏して29年。竹内正実は、日本におけるテルミンの第一人者だ。アンテナに手を近づけたり遠ざけたりして、触れずに演奏し、「演奏する人によって、天使の声にも、お化けが登場する音にもなる」不思議で“尊い”楽器だ。それに魅了されたわけは? そして、テルミンを通じて伝えたいこととは? 本人に聞く。(撮影・蔦野裕)

 小春日和というよりは、夏が戻ってきたかのような晴天の朝、テルミン奏者の竹内正が拠点とする静岡県浜松市の自宅を訪れた。玄関を入ると二間続きの座敷。テルミンはもちろん、機材や資料、自身が開発したテルミンをロシアの人形マトリショーシカのなかに収めた『マトリョミン』……竹内が30年近くにわたって積み重ねて来たものが詰まっている。

 「練習も録音も編集も、すべてこの部屋でしてしまいます。全部自分でやりたいたちなんです。『鎌倉殿の13人』のテルミン演奏も、ここで録音したんですよ」

 『鎌倉殿の13人』のテルミン演奏というのは、本編終了後に放送される『大河紀行』で流れた音楽のこと。夏の暑い盛りに、竹内が演奏する楽曲が登場。物悲しいテルミンの音色がたくさんの視聴者の心を揺さぶった。

「反響もいろいろいただきましたが、『テルミンって奇天烈楽器だと思っていたけれど、こんなに心に触れる楽器だと知らなかった』というような声が多かったですね。これまでテルミンの知名度が上がるチャンスは何度かあって、それが再びやってきたのだと思いましたが……未だに奇天烈楽器であるというネガティブな側面もあるのだなあという気持ちも持ちました」 

 箱から突き出たアンテナに手を近づけたり離したり。開いた手のひら念を送るように震わせて音を出したりもする。テルミンを演奏する姿は人をギョッとさせることも少なくない。それが初見ならなおさらだ。「演奏にはものすごく集中力が必要なので、すごく真剣な、怒っているような表情になるので、“テルミン顔”なんて言われ方もしますからね。制御に集中力が必要なのでそうなっちゃうんですけど」と竹内は笑う。

『鎌倉殿の13人』の大河紀行で話題!テルミンの竹内正実が12月に東阪で復活のライブショー 5年前に脳出血で右半身に麻痺

2022.11.03 Vol.Web Original

 日本におけるテルミン演奏の第一人者である竹内正実が12月にコンサート「竹内正実復活のライブショー」を大阪と東京で開催する。ライブは、大阪は12月5日、東京は同6日の日程で、東京公演はオンライン配信も行われる。

 テルミンはロシア生まれの世界最古の電子楽器。触れずに演奏するのが特徴で、突き出たアンテナに手を近づけたり遠ざけたりすることで音程や音量をコントロールして演奏する。テルミン単体、ピアノや弦楽器などとシンプルな構成で演奏したり、ロックバンドなどの演奏に効果的に取り入れられたりして演奏されてきた。

 本コンサートは、クラシック音楽を思わせるアプローチでテルミンの美しい演奏を追及してきた竹内がテルミン演奏家としての再起をかけたコンサート。竹内は、5年前にコンサート中に脳出血で倒れ右半身に麻痺が残り、演奏に繊細さが必要となるテルミンを以前と同じように演奏することは困難となったが、現在は演奏時の利き腕の右腕と左腕の役割を入れ替えて“レフティ”のテルミン奏者として再起を図っている。

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