4月28日に投開票される衆議院の補欠選挙が3つの選挙区で行われている。その中でも最も注目を集めていると言っても過言ではないのが東京15区だ。
ここは元自民党の柿沢未途前衆議院議員の辞職に伴っての補選。柿沢氏の辞職の理由が江東区長選を巡る公選法違反(買収など)の罪で起訴されたことというのも昨今の「政治と金」問題から話題を呼んでいたのだが、立候補者がとにかくバラエティーに富んでいる。
ベストセラーとなった「五体不満足」の乙武洋匡氏(48歳、無所属、新)、元格闘家で参議院議員の職を辞して立候補の須藤元気氏(46歳、無所属、新)、保守勢力の中で注目されている飯山陽氏(48歳、諸派、新)、選挙期間中も2度目のエベレスト登頂に挑戦している福永活也氏(43歳、諸派、新)とちょっと検索しただけでも個性的な面々が並ぶ。いずれも週刊誌からネットメディアまでそれぞれの媒体の好物となりそうな人たちばかり。いや、実際、立候補が噂された段階からさまざまな形で話題にはなっていた。
しかしそれも告示日が過ぎ、選挙戦が始まればそれなりの政策論争になるのではと期待していたのだが、そうは問屋が卸さないのが東京15区。
乙武氏については告示日の16日の第一声の際に別の候補者の陣営が選挙カーを乗り付け、横で大音量で演説。21日には亀戸駅前の街頭演説会の際に乙武陣営の関係者と見られる男性を突き飛ばした容疑で男が逮捕され、同日の豊洲駅周辺での演説の際には乙武氏の応援に駆けつけた大田区の荻野稔区議が、16日の第一声の際の候補者のたすきをかけた人物から引き倒されたとして、その動画をSNS上にアップ。これらの選挙妨害ともいえる行為に東京15区である江東区の大久保朋果区長が自身のX(旧ツイッター)で「江東区長として、区民の皆さんの安全確保を深川、城東、湾岸警察署にお願いしています。東京都、警視庁とも連携しています。江東区の安全を守りたい。強く思っています」との声明を出す異常事態となっている。
これらの事象を受け乙武氏はこれまでの自らの体験から掲げた「『こどもまんなか』の日本へ」「インクルーシブな日本へ」といった人権問題に重きを置いた公約に加え、22日には「選挙の自由妨害罪」に関する「公職選挙法の改正」を追加公約に掲げ、闘う姿勢を見せている。
選挙妨害は言語道断で大きな問題。果たしてどんなことが行われているのか?と思い、街頭演説を取材しに行こうと思ったら、なかなかその情報が出てこない。今回の一連の流れのせいか各陣営とも街頭演説の予定をSNS等で告知しない傾向となっているようなのだが、果たしてこれで有権者はそれぞれの候補者の政策や人柄などを知ったうえでの投票行動ができるのだろうかという疑問は残る。東京15区の有権者にとっては難しい選挙になっているといえるだろう。
今回の選挙には上記の候補のほかに吉川里奈氏(36歳、参政、新)、秋元司氏(52歳、無所属、元)、金沢結衣氏(33歳、維新、新)、根本良輔氏(29歳、諸派、新)、酒井菜摘氏(37歳、立憲、新)が立候補している。