本格長編推理小説の新人文学賞「鮎川哲也賞」の第27回受賞作で、「『このミステリーがすごい!』2018年版国内編」、「〈週刊文春〉ミステリーベスト10 2017年 国内部門」「本格ミステリ・ベスト10 2018年版国内ランキング」すべてにおいて1位を獲得。史上初のデビュー作にして3冠を達成した『屍人荘の殺人』。
舞台は本格ミステリーにふさわしく、犯人、被害者、容疑者が閉ざされた空間に取り残され、何らかの理由により外界と隔離、連絡する手段もないクローズド・サークル。登場する人物もサークルの合宿で別荘に集まった大学生と、ミステリー小説の王道ともいえる設定。しかし、この小説の肝は、そのクローズド・サークルがどのようにして作られたかにある。その突拍子もない状況下で、驚きの連続殺人が展開するのだが、果たしてこの舞台設定は本格ミステリーと言えるのか? 確かに犯人、謎解き、トリックなどは本格ミステリーとうならせるものの、ミステリー好きには意見が分かれるところだろう。
しかし、そんな意見が出ても、ぐいぐいと読ませるストーリー展開はお見事。いい意味で読者を裏切る仕掛けは、エンターテインメント性に満ち、冒頭の手紙の文面を最後のエピローグで鮮やかに回収するところなど、読後もスッキリ。選考委員が全員一致で受賞を決めたというのも納得の力作だ。