映画『流浪(るろう)の月』のワールドプレミアが4月30日(現地時間)、韓国・全州で開催中の第23回全州国際映画祭にて行われ、李相日監督とホン・ギョンピョ撮影監督が登壇。李監督は現地観客の喝采に感激した。
凪良ゆうによる同名小説を『フラガール』『悪人』『怒り』などの李相日監督が映画化。10歳のころに“誘拐の被害者”となった少女・更紗と、その“加害者”となった青年・文が再び出会うことで動き出す宿命を描く。
上映チケット即完売という人気ぶり。冒頭、主演の広瀬すずと松坂桃李のコメント映像も上映。2人は「アンニョンハセヨ(こんにちは)。李監督とホンさんの息の合ったコンビネーションで映し出された更紗と文の姿が、韓国でどのように受け止められるのか楽しみです」と観客にメッセージ。
約2時間30分の上映後、万雷の拍手に包まれ登壇した李監督とホン撮影監督。李監督は「全州国際映画祭には以前審査員として参加させていただくなどご縁があり、もう一つ、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』の撮影現場の見学に行った際に(ポン監督の紹介で)ホンさんと出会うことができたが、それがここ全州だった」と同地との縁を明かした。
以前から李監督の作品が好きでオファーを快諾したというホン氏が「日本は韓国と違って空気がきれい。撮影をした松本は特に風景がきれいなところで、陽が落ちるまでの時間が長くてブルーがちょっと強め」と撮影監督ならではの視点で日本での撮影を振り返りかえると、李監督が「ホンさんが早めに覚えた日本語は月、風、そして“めしおし(撮影の都合で食事時間を後まわしにして撮影を続けること)”」と日本の撮影現場用語で笑いをさそった。
会場のファンからも2人への質問が殺到。『悪人』『怒り』と本作に共通しているテーマはあるかと質問されると、李監督は「社会の中で傷つき声をあげられない人たちの声をすくい取ることも映画の役割の大きな一つだ、というイ・チャンドンさんの言葉を若いころに読んだことがあり、ものすごく感銘を受けた」と韓国の名匠イ・チャンドンの影響を明かし「同じようにはできなくても自分なりに、映画を作ることで目をそらさないように、通り過ぎていかないようにしているかもしれません」と映画作りへの思いを語った。
その後も40分間のティーチインの間中、質問は途切れることなく続き、終了後には2人のサインを希望するファンが長蛇の列をなすなど、大盛況のワールドプレミアとなった。
映画『流浪の月』は5月13日より公開。