スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。
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紀平梨花が圧巻の初優勝【グランプリファイナル レビュー 】
圧巻の初優勝だ。紀平梨花が、ショートプログラムとフリースケーティングともに1位となり、初出場のグランプリファイナルで頂点に立った。
紀平はショートでは今シーズンの世界最高得点を記録、アリーナ・ザギトワの自己ベストを2点近く塗り替えた。冒頭の3回転半ジャンプに始まり、プログラムの最後まで美しい演技の流れが途切れなかった。1位で折り返し、迎えたフリー。1本目の3回転半はダウングレードで降り手をついた。それでも挑戦を諦めず、2本目の3回転半はコンビネーションにして綺麗にリカバリー。これまでの戦い方からすれば、ここのジャンプは2回転半に変えて着実に得点を取りに行くことも考えられたが、ファイナルというシリーズ最後の大舞台であることが紀平を突き動かした。
技術点のみならず、演技構成点の側面でも成長が顕著だ。演技構成点トップのザギトワには、ショートであと0.68点、フリーであと0.3点のところまで肉薄。特にフリーでは5項目中4つに9点台を並べた。「ジャンプだけではない」紀平の強さが、世界の舞台でも認められてきた証拠だ。
栄冠は誰の頭上に輝く? 仏大会レビュー&ファイナルのポイント【フィギュアGP 2018】
フランス大会:冷静な紀平、逆転優勝のネイサン・チェン
グランプリシリーズ最終戦の今大会。男子ではアメリカのネイサン・チェン、女子では紀平梨花が2戦連続の優勝。両選手ともグランプリファイナル進出を決めた。
紀平は冷静だった。ショートプログラムでは冒頭に予定した3回転半ジャンプが抜け1回転半とされて、その要素は無得点に。それでも、コンビネーションジャンプや後半に入れた3回転フリップは綺麗に降り、ミスを最小限にとどめた。翌日のフリースケーティングでも冒頭の3回転半はやや傾いた着氷になる。その次も3回転半からのコンビネーションを予定したが、ここは切り替えて2回転半にすることを選択した。最初に高難度の要素を組み込めば、そこだけに気持ちが集中してしまうことも少なくない。3回転半に縛られずに最後までまとまった演技ができる、紀平の強みが生かされた大会となった。
三原舞依はショート1位で折り返すも、フリーで一歩及ばず2位。フリーで最後に跳ぶ3回転サルコウが2回転になるなど、細かいミスが足を引っ張ってしまった。ファイナルに進むには優勝が必須であっただけに、この順位は悔しい結果。けれども、今シーズンは初戦からコンスタントに総合200点台を記録、実力をつけてきた。次は年末の全日本選手権で、四大陸や世界選手権をかけた戦いに挑んでいく。
3位はアメリカのブレイディ・テネル。昨シーズンの全米女王が、今シーズン2大強国である日露に割って入った。長い手足を生かしたダイナミックでスピード感のある演技が持ち味で、昨シーズンに全米を制して以降トップ選手への階段を駆け上がっている。
平昌五輪銀メダル、ロシアのエフゲニア・メドベージェワは4位に。今シーズンからカナダに拠点を移し、ブライアン・オーサーコーチの指導を受ける。ロシアとカナダではスケートにおける流派が異なり、環境にすぐ順応するのは難しい。これまで表彰台の頂点に君臨してきたメドベージェワの成績が伸びにくいのも、その変化の真っ最中であるからにほかならない。ファイナルを逃したショックは大きいが、これまでエッジエラー判定に悩まされた3回転ルッツをフリーで正確に降りるなど、成長点は確実にある。
本田真凜は6位。こちらも今シーズンは新天地・アメリカで練習を重ねる。前戦のアメリカ大会で足を痛めたことが心配されたが、今大会ではショートとフリーともにシーズンベストを更新する出来で復調をアピール。もとからの魅力である滑らかなスケーティングもパワーアップしている。今後の伸びにも期待だ。
羽生結弦が今季最高得点で優勝!フィンランド大会レビューと日本大会の見どころ【フィギュアGP 2018】
フィンランド大会:ハイレベルな内容と得点で強さを見せつけた羽生結弦
最強の五輪覇者が帰ってきた。羽生結弦はショートプログラム、フリースケーティングともに今シーズンの世界最高得点を記録、堂々のグランプリ初戦優勝を果たした。シーズン初戦からプログラム構成難度をより高めて臨んだ今大会。他の追随を許さないハイレベルな内容と得点で強さを見せつけた。中でも注目したいのは、ジャンプやスピン各要素の質の高さ。入りから出まで複雑なターン、ステップが組み込まれ、要素そのものも確実に決めていく。特にショート冒頭の4回転サルコウは、4.3点もの出来栄え点(GOE)を引き出した。それでも羽生は、チャレンジ精神も常に備えた男だ。フリーでは世界初となる4回転トウループ、3回転半ジャンプの連続技(シークエンス)に挑戦。やや着氷で堪えマイナス評価がついたものの、五輪連覇を果たしてもなお上を目指す羽生の姿勢が垣間見えた瞬間に会場が大きく湧いた。次戦はロシア大会。演技の完成度を高め、さらに得点を上積みできるか。引き続き注目だ。
今週末は羽生が出場!アメリカ・カナダ大会レビューと第3戦の見どころ【フィギュアGP 2018】
アメリカ大会:宮原が優勝、坂本が2位というワンツーフィニッシュ
今シーズンのグランプリシリーズ初戦であるアメリカ大会には、日本女子から宮原知子、坂本花織、本田真凜が出場。新しい採点基準の下で各ジャッジによる厳しい判定も見られるなか、宮原が優勝、坂本が2位というワンツーフィニッシュで日本女子の強さを発揮した。
宮原は、課題のジャンプで回転不足判定を取られることなく今大会を終えた。踏み切りから着氷まで勢いと流れが持続し、迷いのなさが感じとれた。グランプリ初戦の緊張感もあった一方で、大きなミスなしにショートプログラム、フリースケーティングを揃えられたことは収穫だ。スケーティングにおいては1歩1歩の推進力が上がり、ジャンプやスピンなど要素間のつなぎも工夫が凝らされている。得意のスピンでは今シーズンから新しいポジションを取り入れ、宮原の魅力がより多彩に表れるようになった。次戦の日本大会でも好演技ができれば、グランプリファイナル出場がぐっと近づいてくる。
坂本は、今シーズンここまでの試合で納得のいく演技がなかなかできずにいたが、アメリカ大会へ見事にコンディションを合わせてきた。昨シーズンも五輪まで誰よりも過密に試合数をこなした坂本だが、今シーズンもその戦い方が功を奏しているようだ。雄大なジャンプは健在で、今大会の厳しいジャッジを通してもなお高評価。坂本のジャンプが世界にきちんと認められていることを実感させた。宮原との総合得点の差は約6点。スケーティングや演技全体の仕上がりにまだ伸びしろがある。ファイナル初出場に向け、次戦はさらに成長した演技を期待したい。
好調ぶりを見せた先の2人に対し、伸び悩んだのが本田だ。転倒もなく演技全体をよくまとめたショートでも、複数のジャンプで回転不足と判定され得点を抑えられた。演技直後には満足げな笑顔が見られただけに、本人の感覚とジャッジの見方にややズレが出てしまった。それでも滑らかなスケーティングには光るものがあり、今シーズンからタッグを組むアルトゥニアンコーチとの関係も良好に見えた。まずは大会中に痛めたという右足首を治してから、次を見据える必要がありそうだ。
4年後の北京五輪を見据えたよりハイレベルな戦い【グランプリシリーズ 20日開幕】
フィギュアスケートのグランプリシリーズは、2018年10月20日 (日本時間)から開幕する。昨シーズンには平昌五輪を熱狂のうちに終え、2022年の北京五輪に向けてまた新しい4年間が幕を開けようとしている。今回のグランプリシリーズには、日本から総勢16名(男女シングル)の選手が出場予定だ。その主な顔ぶれと、今シーズンから適用される新ルールのポイントに触れながら、シリーズ全体の展望を概観する。