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暑い夏に考える「台湾有事は日本有事」~第3回 台湾海峡危機政策シミュレーションに参加して【長島昭久のリアリズム】

2023.08.01 Vol.web Original

 

 7月15‐16日の二日間、同僚議員と共に都内のホテルに缶詰となって、民間シンクタンク(日本戦略研究フォーラム)が主催する「台湾海峡危機政策シミュレーション」と格闘しました。

本邦初の日本・米国・台湾3か国による有事シミュレーション

 この政策シミュレーションは、現職国会議員が首相はじめ主要閣僚役を務め、マスコミ取材フルオープンの中で、様々なシナリオに基づいて政策決定を迫られるというものです。

 私は、初回から参加してきましたが、日本チームに加えて、昨年は米国チームが、そして、今年は台湾から専門家が参加しました。いずれも、実務経験豊かな元政府高官および軍幹部OBで、現実的で的確な対応が非常に参考になりました。

「官房長官」役として首相を支え、閣議をまとめる

 シナリオは、サイバー攻撃などハイブリッド戦に始まり、危機がエスカレートする中で、①中国による台湾への軍事侵攻が現実化した場合、②米国が台湾防衛のために介入することを決断し、日米安保条約第6条に基づき在日米軍基地を使用するための事前協議を日本政府に求めた場合、さらには、③尖閣諸島や与那国島への領土侵害が行われ西日本がミサイル攻撃にさらされる事態に陥った場合、など極めてリアルな想定のシナリオが突きつけられ、私たち閣僚はそのつど対応を迫られました。

 1回目は防衛大臣役、2回目は米国国務長官役を務めた私は、今回は、昨年に続き首相役の小野寺五典さんを支える「官房長官」役を務めました。

2027年、防衛力の抜本的強化で何が変わるのか?

 今回のシミュレーションは、現在ではなく“2027年”という近未来に設定されました。2027年というのは、昨年の安保3文書に基づいて行われる「防衛力の抜本的な強化」の“第一弾”が終わる年です。つまり、我が国が一定の反撃能力を保有し、能動的なサイバー防御態勢も整い、有事の際に海上保安庁が防衛大臣の指揮下に入る「統制要領」も確立し、被侵略国等に対する防衛装備品の提供も可能となっている等、といった想定で行われました。

 これは、現状の保有能力や法体系を前提に行われた過去2回のシミュレーションと大きく異なる点です。これまでの2回は、シナリオを突き付けられるたびに、「こんなこともできないのか!」という歯がゆさの連続でしたが、今回は、実行可能な政策選択肢の幅が広がり、日米同盟協力もかなり円滑に進めることができました。しかし、その分、極めてストレス度の高いより複雑なシナリオを突き付けられ、演習とはいえ神経をすり減らすこととなりました。

残された4年間で何を成すべきか?

 シナリオの詳細については、「日本戦略研究フォーラム」のHP(www.jfss.gr.jp)をご参照いただければと存じますが、以下に、今回のシミュレーションを通じて課題として浮き彫りになった重要なポイントを2つに絞って記しておきたいと思います。

 第一に、「反撃能力」や「能動的サイバー防御力」を実効あるものとするためには、それを支えるアセットや法整備が必須となるという点です。スタンドオフ・ミサイルの射程を延伸し、敵の基地に反撃を加える能力を持ったとしても、目標を精確に探知・追跡(ターゲッティング)する「眼力」を持たなければ、役に立ちません。

 この分野における米国依存を脱却して、独自の衛星や無人機といった探知アセットの整備を急ぐ必要を痛感しました。また、サイバー攻撃から電力網や通信、鉄道、医療、金融システムなど我が国の重要インフラを守るには、能動的サイバー防御を実施する政府機関に対する電気通信事業法や不正アクセス禁止法など現行法制の「適用除外規定」を設ける法整備が喫緊の課題となります。

目の前で起こる事態に適時適切に対応できない現行の安保法体系

 第二に、「事態認定」の問題です。我が国の安全保障法体系には、他国にはない特有の「仕組み」が埋め込まれています。それが、事態認定です。それは、①我が国が武力攻撃を受けた(あるいは、受ける可能性が高まった)事態と、②未だ攻撃を受けてはいないが我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態の二つに分類されますが、この事態認定を行わないと、自衛隊を柔軟に動かすことも、国民保護を実施することもできません。しかし、シミュレーションでも明らかになったように、この二つの事態は、密接に連動するものです。

 とくに、台湾海峡や朝鮮半島など我が国周辺で不測の事態が起こった場合、②の事態で米国(軍)が動く際には、必ず同盟国として我が国が相応の対応を迫られます。その時に、事態認定に手間取ってしまえば、目の前の事態に適時適切に対応できないばかりか、日米同盟協力にも穴を空けてしまいかねません。

 この点については、前回のシミュレーションの後に、月刊誌『正論』2022年10月号に論考を寄せましたが、1年経った現在でも改善されていません。改めて警鐘を鳴らし、政府与党内で真剣に検討することを促します。

そもそも有事を起こしてはならない!~そのために必要なこと

 いずれにせよ、私たち政治家に課された最大の責務は、そもそもこのような有事を起こさないことです。そのための外交努力こそが大切です。しかし、「汝、平和を望まば、戦に備えよ」という人類古来の格言が示すように、有事に対する冷徹にして周到な備えなくして、有事を抑止し平和を維持するための外交を柔軟に展開することはできません。

 私、長島昭久は、そのことを肝に銘じて、引き続き外交・安全保障に全力で取り組んでまいります。

今より後の世を如何にせむ…「未来に誇れる日本」へ!【長島昭久のリアリズム】

2022.10.12 Vol.web Original

 お蔭さまで安倍晋三元総理の国葬儀も無事終わり、第210国会(臨時国会)が召集されました。国葬儀では、菅義偉前総理による友人代表弔辞、とりわけ暗殺によって先立たれた盟友伊藤博文を偲んで山縣有朋が詠んだ歌「語り合いて尽くしし人は先立ちぬ 今より後の世を如何にせむ」が多くの国民の心を打ちました。臨時国会では、安倍総理の好敵手だった野田佳彦元総理による追悼演説受諾が、分断深まる国会から暗く重たい空気を一掃しました。

 私は、今国会、東日本大震災復興特別委員会委員長を拝命しました。これで3国会連続で委員長(安全保障委員会、拉致問題特別委員会)を務めることとなり、その重責に身の引き締まる思いです。とくに、これまで「こどもの未来保障」に取り組んできた立場から、東日本大震災で親御さんを亡くし幾多の苦難に直面する震災遺児の皆さんに対する支援に力を尽くして参りたいと決意を新たにしております。

外交・安全保障通の長島昭久氏がウクライナ問題が東アジアにもたらす影響を解説〈インタビュー〉

2022.03.11 Vol.Web Original

 ロシアによるウクライナ侵攻は予断の許さない状況が続いているが、この問題はこの2国間やヨーロッパだけにとどまらず、東アジアにも大きな影響をもたらす可能性があるともいわれている。本紙コラムニストで自民党の衆議院議員・長島昭久氏に今回の問題について聞いた。

国民一人ひとりが安全保障について考える意義とは?防衛省「防衛研究所」で聞いた【後編】

2021.10.24 Vol.Web Original

 防衛省のシンクタンクであり、国立の安全保障に関する学術研究機関でもある「防衛研究所」。後編では、私たちが「国防」について考える意義や今後の課題について中山泰秀防衛副大臣(肩書きは当時、以下同)と、防衛研究所の庄司潤一郎研究幹事、飯田将史米欧ロシア研究室長、庄司智孝アジア・アフリカ研究室長に話を聞いた。

日本で唯一!安全保障に関する国立学術研究機関、防衛省「防衛研究所」はどんな組織?【前編】

2021.10.23 Vol.Web Original

 防衛省のシンクタンクであり、国立の安全保障に関する学術研究機関でもある「防衛研究所」。普段私たちが意識することの少ない防衛研究所だが、一体どんな組織で、どのような人がどういう思いで働いているのだろうか? その概要や魅力などを中山泰秀防衛副大臣(肩書きは当時、以下同)と、防衛研究所の庄司潤一郎研究幹事、飯田将史米欧ロシア研究室長、庄司智孝アジア・アフリカ研究室長に話を聞いた。

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