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現代劇に初挑戦の尾上右近「たくさん恥をかけるのがうれしい」

2018.06.13 Vol.web Original

 尾上右近主演の舞台『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』の会見が13日、都内の会場で行われ、主演の尾上右近と翻訳・演出のG2が登壇した。

 冒頭G2は「長年舞台の仕事をしてると、やらねばならない作品と、やっておかなきゃならない作品があって、やらねばならない作品はどんどん目の前に現れるが、やっておかなきゃならない作品はどうしても後回しにしてしまう。今回は久々にやっておかなきゃいけない作品に出合え、なんとか稽古をやるところまでこぎつけたのをうれしく思っている」と作品についての思いを語った。
 また、右近について「翻訳ものはおろか、現代劇のストレートプレイは初めてという中、チャレンジ精神で出演を決めていただいた勇気を尊敬します。稽古もすごく頑張っているので完成が楽しみです」と期待を寄せ、「非常にチャレンジングで、とても勉強して稽古場に来ている。頼もしいと思って見ています。意欲的であり、僕自身、非常に刺激になっています。歌舞伎役者としての土台はあるので、そこから新たな魅力をどう作るかということを考えながらやらせてもらっています」とその姿勢を評価した。

 右近は「新人の尾上右近です」と挨拶し、「何しろ初めての事づくしで…。初翻訳劇、初現代劇、初主演は、困難を極めることだということを覚悟の上、挑戦させていただきます。しかし、今回の舞台が、自分の糧になるという事と、危ない道、危険な道に進みやすい自分の性格を受け入れた上で、これは乗り越えなければいけない試練だと思っています。おかしいんですけど、恥をかくことが好きなので、たくさん恥をかけるのがうれしく思っています(笑)。1日1日成長していく事を自分の中で信じ、稽古をしています」と決意を述べた。
 通し稽古を数日間やってすぐに本番を迎える歌舞伎との違いについて「歌舞伎では基本的に自己管理で舞台に上がるので、出演者とディスカッションする事はあまりない。今回の舞台の稽古では、自分が疑問に思うことや、やってみたい事を演出の方などにぶつけられることが新鮮。むしろぶつけないと広がりを持たないので、分からないことや相談したい事は抱えないことが大事かなと」と戸惑いをみせつつも「初めての立ち稽古では、セリフに追われ動きがなくなり、気が付いたら相手役の南沢奈央さんと並んで喋っていた。その時は漫才に見えちゃうと言われました(笑)」と失敗談を披露して会場を笑わせた。

 また、共演者について「意外と葛山(信吾)さんがいじられキャラで(笑)。どうやら葛山さんはカラオケですごい力を発揮されるらしいんです。だから早くカラオケに行きたい(笑)。どういう力なのか、話ばかり伺っていて、自分の中で想像ばかりが膨らんでいるので、早くそれを目の当たりにしたい。とにかく共演者のみなさんとカラオケに行きたいです(笑)」と意外な秘密を暴露した。

 見どころについてG2は「コカインやイラク戦争に行った若者のトラウマなどのアメリカのいろいろな問題や、昨今のネット社会についてなど社会派といわれるお芝居ですが、決して難しい話ではありません。社会の悪いところをつついて掘り返す話ではなく、そこにいることを前提とした若者たちが、いかに新しい明日に向かって歩き始めるかという、見終わった後に勇気が出る作品だと思います」とコメント。右近も「人種も違うそれぞれの役の個性が、どうつながり、どういうメロディーを奏でるかというところが非常に魅力的なお芝居だと思います。薬の問題、ネット社会の問題などを題材にしていますが、そこには人の心があり、そんな人の心の温かみ、温もりが伝わるお芝居だと思います。そこを感じ豊かな気持ちになっていただければ」と語った。

『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』は、7月6日(金)から、新宿の紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演される。

【インタビュー】尾上右近が現代劇に初挑戦!「新しい経験にワクワクしています」

2018.05.30 Vol.Web Original

 最近はバラエティー番組などにも出演、人気急上昇中の歌舞伎俳優・尾上右近。勝手が違う世界に戸惑っているかと思いきや…?

「素の自分を出さなきゃいけないので、人間力が試されている気がします。バラエティーでは特に自分をいいタイミングで出す瞬発力が必要だと思いました。出さなきゃいけないけど、出さないという出し方もある。その辺り自由なので楽しいですが、まだ全然慣れませんね」

 彼の名前が一躍有名になったのは、2017年『スーパー歌舞伎II ワンピース』の公演。本番中に負傷した四代目市川猿之助に代わり、同公演に出演していた右近が終演まで主役を務めあげた。

「昨年猿之助さんの代役をさせていただいたことで、多くの方に知っていただけるようになったと思います。その舞台を務めたことで、今までどんなことを感じて何をしてきたのか改めて分かりましたし、その上で今自分に足りないものが何なのかもよく分かった。あのような状況で知っていただくということはあまりない事ですが、自分としてはこれまで通りやっていくだけだと思っています。自分はもともと歌舞伎役者の家に生まれたわけではなく、歌舞伎役者をやりたくて、自分で選んでやっているので、まだまだやりたい事がたくさんあります。大きな夢もあるし、経験してみたい事もいっぱいある中で、自分の事を知っていただき、新しいお仕事ができるのはすごくうれしいと素直に思います」

 右近の家系は華やかだ。父は清元宗家七代目清元延寿太夫で、曽祖父は六代目尾上菊五郎。さらに、従兄弟に十八代目中村勘三郎、祖父に昭和を代表する映画スター鶴田浩二を持つ。

「曽祖父が歌舞伎役者だったので、歌舞伎にはすごく近い環境の中で育ちました。その中で、小津安二郎監督が撮った『鏡獅子』という映画をたまたま3歳の時に見て、それをやりたいと強烈に思ったんです。鏡獅子というのは歌舞伎舞踊で、曽祖父の六代目尾上菊五郎がその映画の中で、それを踊っていた。それやりたいがために舞踊や歌舞伎の稽古を始めましたし、自分が今ここにいるすべてのきっかけが、その曽祖父の踊りを見たことでした。うまくは説明できませんが、本当にすごく強烈にひかれて、その役をやりたいという気持ちになったのを今でもはっきりと覚えています。もともと、清元という邦楽の家でしたので、その稽古も始めて、どんどん古典的なものにものめり込み、子役として歌舞伎の舞台に立たせていただく機会もいただくようになりました。その中で演じる事の楽しさにも目覚め、そこからずっと役者でありたいという気持ちが続いています。右近という名前を襲名させていただいた時は、自分の思いがつながったなと思いました。それに関しては運もあるし、タイミングもありましたが、自分はとても恵まれているなと感じますね」

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