モノクロームの静謐で詩的な写真作品やインスタレーションで知られ、海外でも高い評価を得ている写真家・山本昌男の展覧会。
山本は自らの写真作品を俳句に例えることがあるという。小さいものや些細な出来事を大切にすくい上げ、そこから丹念に光を探してきた山本にとって、最小限の要素を用いて無限の広がりを表すという点で、とてもよく似た表現方法なのだという。
同じように、限られた空間上に自然や宇宙を凝縮した「盆栽」に対して山本が深い興味を抱いてきたのも、ごく自然なことだろう。日本を代表する盆栽家・秋山実氏と知り合った山本は、近年さまざまな盆栽と向き合い、その静謐にして雄弁なたたずまいを写真に収めてきた。
曹洞宗の開祖道元は著書『正法眼蔵』に一滴の露にも全宇宙が宿ると記した。同シリーズでも山本は、これまで被写体として切り取ってきた路傍の石や木の根と同じく盆栽と真摯に向き合い、その“小さな宇宙”が発する光をとらえている。
“手の中の1滴”に宇宙の壮大な広がりを感じてみては。