大学受験シーズン真っ只中ですが、先日、あるネット記事に目が止まり、フェイスブックにシェアをしました。朝日新聞EduAで今月9日、掲載した早稲田大学の恩藏直人常任理事へのインタビュー記事です。
記事のテーマはAO入試(総合型選抜)。AOを経て入学した学生のGPA(成績評価)が高い傾向から、各大学が積極的に受け入れるようになっている流れを受け、早稲田の取り組みを恩蔵先生に尋ねたものですが、先生は、私が文科大臣補佐官時代、高大接続システム改革会議の委員のお一人でした。
当時からAO経由の学生の手応えは伺っておりましたが、その後も堅調なようです。取材に対し、AO入試学生のGPAについて「全般的に結構高い」と述べられ、「受験する学部を第一志望にしていて、入学後の目的がはっきりしているためでしょう」と分析されています。また、指定校推薦についても「地方出身者の割合が多く、GPAも平均値よりやや高い」ということでした。
そして気になる多数派、一般入試からの学生のGPAはどうか。「どの学部でもGPAで並べると平均的」と安定しており、問題視する声はないとのことですが、改革の手を緩めません。本欄でも以前書きましたが、看板の政治経済学部の入試で記述式を導入し、数学ⅠAを必修に。商学部でも数学ありの入試枠を増やしました。
ご記憶の方もおられるかもしれませんが、8年前、私は早稲田の暗記偏重の入試スタイルを変えるべきと、ネットメディアの記事で強くご提案したこともありました。マークシート型、暗記型に偏りすぎた旧来型の入試では、AIが進化する近未来を担う人材育成に相応しくないと考え、思考力・論述力や探究活動の実績など多面的な評価を増やしていくべきと考えたからです。
早稲田は私立大学受験者数のトップ3に常に入っておりました。誰もが認める私学の雄である早稲田の入試が変われば、受験生の多くを占める日本の私立大文系志望者の学びが変わっていくという、入試改革の“トリクルダウン”効果を期待し、強く改善を求めました。大学から私の書いた記事にご指摘を受けたこともありましたが、隔世の感があります。鎌田薫前学長、田中愛治現学長、恩蔵常任理事はじめ、関係者の皆様のご努力に改めて敬意を表したいと思います。
この間の大学入試改革のMVPは明らかに早稲田大学です。同校の本気度が十分に伝わります。各大学もこれに見習い、切磋琢磨しながら、10年後面白い人材を輩出していきたいものです。
(東大・慶応大教授)