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「2024年本屋大賞」は宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』。「M-1王者のように本屋大賞作家とずっと呼ばれることになる。身が引き締まる」

2024.04.10 Vol.Web Original

「2024年本屋大賞」の発表会が4月10日、都内で行われ、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』が大賞を受賞した。

 この本屋大賞は出版業界の活性化のため年に1回、全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶもの。これまでの受賞作には小川洋子の『博士の愛した数式』、恩田陸の『夜のピクニック』、リリー・フランキーの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』などがあり、それぞれ受賞とともに大きな話題を呼んだ。

 この『成瀬は天下を取りにいく』は滋賀県大津市を舞台に、主人公・成瀬あかりの中学2年生の夏から高校3年生の夏までの間の出来事を描いた連作短編集。

 宮島さんは受賞後のスピーチで「膳所から来ました宮島未奈です。滋賀の皆さん、見てますか? 成瀬が本屋大賞を取りました!」と第一声。そして「本屋大賞にノミネートが決まった時から、作品の舞台である滋賀県の大津市は大変な盛り上がりです。JRの膳所駅には大きな成瀬と島崎のウエルカム看板が設置され、物語に登場したスポットをめぐるスタンプラリーも開催されています」などと地元の盛り上がりを紹介した。

「2024年本屋大賞」超発掘本に井上夢人さんの31年前の小説『プラスティック』「これから読む人の中には生まれてない方もいるのでは…」

2024.04.10 Vol.Web Original

「2024年本屋大賞」の発表会が4月10日、都内で行われ、特別企画である「発掘部門 超発掘本!」に井上夢人さんの『プラスティック』が選ばれた。

 この「超発掘本!」は洋の東西、ジャンル、さらに刊行の新旧を問わず、書店員が「売りたい」と思った本、常日頃から思っている本を推薦するもの。

 同作は1993年に双葉社の「小説推理」という雑誌の中で連載され、その後、2004年に書籍化された。

 井上さんは「31年前の小説。びっくりしました。よくよく考えると、これから本を手にしていただいて読んでいただく方々の中には30年前には生まれてない方もいらっしゃるのではないかと思います。恐ろしいことです。小説家はみんな、自分が書いたものが少しでも多くの方に読んでいただけるということを希望しているし、同時になるべく長く読み継がれてほしいと考えていると思う。ところがなかなかそういう具合にはなりませんで。そうは問屋が卸さないという状況が非常に多くの本で展開されます。せっかく本にしていただいたのに、1カ月2カ月すると、すーっと消えて行ってしまいます。どこかに行ってしまうのか。作者には何の断りもなく、何の打ち合わせもなく消えて行ってしまいます。それが今回、こうやって30年も前に書いたものを掘り返していただき、超発掘本という金襴緞子の帯をつけていただいて、日に当てていただくチャンスをいただけたというのは、作者としてこれ以上のものはない喜びだと思います。これが作家冥利に尽きるということなのかなとつくづく感じています。今回はありがとうございます」などと挨拶した。

作家の凪良ゆうさんが書店激減に危惧「熱意ある書店員さんがいる本屋さんでも立ちいかないものなのか」

2024.04.10 Vol.Web Original

「2024年本屋大賞」の発表会が4月10日、都内で行われ、大賞のゲストプレゼンターとして登場した作家の凪良ゆうさんが昨今の書店の減少に警鐘を鳴らした。

 凪良さんは2020年に『流浪の月』で第17回、昨年は『汝、星のごとく』で第20回本屋大賞を受賞。今年も『星を編む』がノミネートされたのだが惜しくも受賞はならなかった。

 凪良さんは今回、『成瀬は天下を取りにいく』で大賞を受賞した宮島未奈さんの表彰の際に特別ゲストとして登場。その際のスピーチで過去の受賞について「どちらの作品も書店員さんの応援のお陰でたくさんの方にお届けすることができました」と感謝の言葉を述べたうえで「うれしくありがたく思う一方で気になるニュースもありました。本屋大賞が動き出した約20年前、全国には2万軒を超す書店さんがありました。それが10年前には1万5000軒に、昨年は1万軒に。この20年でほぼ半数近くに減ってしまったということです。私は本屋大賞をいただいたお礼におうかがいした書店さん、常から応援してくださっている書店さん、その中からもいくつか閉店の連絡をいただき、そのたびに言葉にならないやるせない気持ちになりました。心ある、熱意ある、物語を愛する書店員さんがいる本屋さんでもやはり立ちいかないものなのかなと。私が今あるのは本屋さんのお陰だと思っています。その本屋さんに一番の恩返しは何ができるのか。それはもちろん作家なので、いい作品を書いてお届けする。それだけなんですが、この1年間で版元である講談社さんと一緒に“自分たちが本屋さんにできることは何かないか”ということを考えてきたつもりです。それは本屋大賞をいただいた作家の責任だと思っているからです」と書店の減少を危惧。

 そのうえで「こういうことを言うとプレッシャーになるかもしれないですが、そのバトンをここからは宮島さんと成瀬にお渡ししたいと思います。昨年はこの場所で“応援してくださる皆様が私の輝ける星です”とお話しさせていただきました。今年は成瀬が天下を取りつつ、書店さんを一緒に盛り上げていってくれると期待しております。私もバトンは渡しましたが、引き続き書店さんを盛り上げるお手伝いができればと思っております」などと、この日、大賞を受賞した宮島さんと作品の主人公である成瀬の今後の活躍に期待した。

【おすすめ本】ラジオリスナー必読! 本屋大賞受賞作家・佐藤多佳子の傑作長編『明るい夜に出かけて』

2017.08.28 Vol.696

 主人公はコンビニでアルバイトをしている富山。大学を休学し、親から1年の猶予をもらい一人暮らしをしている。人とコミュニケーションをとるのが苦手だけど、自意識だけは人一倍。今どきの若者にありがちな、いわゆる面倒くさい奴(自称)。バイト先のコンビニと一人暮らしの自宅のアパートの部屋を往復する日々の中で、唯一の楽しみが深夜ラジオ。特に「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」は、大切な大切な番組だ。

 大学に通っていたころに炎上したため、ツイッターやハガキ職人から逃げて姿を消していたにも関わらず、どうしても我慢できずに、その番組のためだけに、ひっそりとツイッターのアカウントを作り、ハガキ職人として投稿を復活させるほどに。

 ある日、コンビニに現れた変な服装のチビ女。小学生にも見えなくもない、立ち読み女はなんと、「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」の超常連有名職人だった。その出会いをきっかけに、その女、女子高生の佐古田、バイト仲間の鹿沢、そして高校時代の同級生・永川が、富山の生活にグイグイ浸食してきて…。

 親から、大学から、友達から逃げてきた富山だが、人との出会い、深夜ラジオを通じての交流、そして生身の人間同士の面倒くさい付き合いにより、ほんのちょっと心を開けるようになり…。深夜ラジオ好きも共感100%の青春小説。

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