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避難区域の保護猫と暮らして“9年目”の春に思うこと「10年の節目に、つらさがよみがえった元飼い主に伝えたい」

2021.05.02 Vol.web original

毛がむしられ“ごま塩”状態の黒猫

「今ではこんなに甘えん坊になっちゃったね」と、愛猫“テツ男”に微笑む山本洋子さん(仮名)。テツ男も目を細めて山本さんを見つめ返す。テツ男が山本さんのもとに来たのは今から9年前、2012年2月のこと。テツ男は、東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所の事故により避難区域に指定された福島県浪江町で震災発生から約1年後に保護された猫だった。

「ずっと飼っていた猫を亡くしてからもう猫は飼わないと決めていたんです。でもある日、すごく気落ちすることがあって、せめて猫を眺めて癒されたい!と思って…。たまたまやっていた近所の保護猫譲渡会を覗いてみたんです」

 猫を飼うことはまったく考えていなかったと山本さん。

「そこに、すごくほっそりして愛らしいメスの黒猫がいて。なんてかわいい猫だろうと思って見ていたら、譲渡会の方が“もしかして黒猫が好きなの?”と言って、この子を連れてきた。見た瞬間、なんて“ぶさかわ”いい猫だろうと思いましたね(笑)」

 そのオスの黒猫は、譲渡会でもまったく人気が無い様子だった。

「体の大きな大人の猫であることに加え、黒猫なのにところどころ毛色があせて白髪っぽいというか“ごま塩”になっていたんです。しかもトリモチで捕獲されたらしく、あちこち毛がむしられてハゲちゃっていて。それに、抱っこされて連れてこられたんですけど、撫でても声をかけても、ずっと目をつむってまったく反応しない。愛想がないというより完全に内にこもってしまっている感じでした。最初は、どこか病気なんじゃないかと思いましたね」

 山本さんの口から出たのは「この子をお迎えしたい」という言葉だった。

「万が一、また猫を飼うとしたら保護猫を…とは思っていたので、かわいい猫がいいとかメス猫がいいとか、そういう希望は一切無くて保護猫ならどの子でもよかった。誰にも引き取られずに残りそうだったら、私がこの子を迎えようと思ったんです。

 通常、一人暮らしの会社員の場合、猫が孤独になりがちと言う理由で断られるケースも多いそうなのですが、きちんと飼育環境に適しているか私の状況や部屋の中もしっかり確認してもらったうえで、すぐに譲り受けることができました」

国連事務総長、震災10年にビデオメッセージ。「誰一人取り残さないために」

2021.03.11 Vol.Web original

 東日本大震災から10年の11日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長がビデオメッセージを寄せた。メッセージでは、被災者やその家族へ哀悼の意を示すと共に、防災への意識や教育の向上、さらには高齢者や障害者など災害弱者への配慮を訴えた。以下、全文。

東日本大震災から10年に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ(2021年3月11日)

『本日は、10年前の東日本大震災による死者、行方不明者あわせて1万8400人の方々を追悼する厳粛な日です。最愛の方を失い、今も深い悲しみの中にある方々に、心より哀悼の意を表します。

私はまた、破壊された福島第一原子力発電所をめぐる安全上の懸念により、今も避難を余儀なくされ、故郷に戻ることが叶わない方々に思いを寄せています。その観点から、私は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)がこのたび発表した、心強い内容の調査結果を歓迎します。

日本は、防災分野で世界をリードしています。この10年間、日本はより安全な復興に向けて多大な投資をしてきました。日本はまた、教訓を未来に向けて共有すべく支援してきました。6年前に採択された「仙台防災枠組」は、より安全な世界を目指すグローバルな指針です。

災害を防ぎ、管理するには、各国が計画を立て、資金を投じ、早い段階で警告を発し、何をすべきかについて教育・啓発していく必要があります。各国はまた、高齢者や障害者など、最も脆弱な立場に置かれた人々を優先しなければなりません。

地震、生物学的ハザード、パンデミック、そして異常気象など、今日直面している数多くのリスクを管理するために、私たちは包摂的でなければなりません。災害が起こった時に、誰一人取り残さないために。』

震災発生からの膨大な取材データから問いかける 「あのとき」と「これから」〈特別企画「震災と未来」展 ―東日本大震災10年 ―〉

2021.03.06 Vol.739

 地震発生から今日まで、東日本大震災を取材・報道してきたNHKと、幅広いテーマを科学的に紹介してきた日本科学未来館が共同主催で巨大災害と向き合う〈特別企画「震災と未来」展 −東日本大震災10年 −〉が、お台場・日本科学未来館にて開催中。10年にわたるNHK取材データの結晶ともいえる同展について企画チームを率いる代田一貴氏に話を聞いた。

NHKの膨大な映像・取材記録で振り返る「震災と未来」展が6日からお台場で開催

2021.03.05 Vol.web original

 特別企画「震災と未来」展(3月6日から開催)の報道内覧会が5日、同館にて行われた。

 同展は、震災を忘れず、教訓を未来へつなげるため“震災の記憶”“その後の人々が生んだ絆”“未来への課題”の3つをテーマに、NHKと日本科学未来館の共催で行われるもの。

 ゾーン1「東日本大震災をNHKアーカイブスで振り返る」では、震災発生時から10年、NHKが記録・蓄積してきた膨大な映像と取材記録により、実際の状況を振り返ることができる。

 会場に入るとすぐ、導入に続く部屋では、発災当時に撮影された、地震の大きな揺れや街を飲み込む津波の映像を大型モニターで上映。テレビやスマホで同様のニュース映像を見た人は多いはずだが、まるで自分がその場にいるかのような映像に、巨大災害の恐ろしさ、そのただ中にいた人々への思いが沸き上がる。(同映像の前に注意書きあり。スキップルートが用意されている)

 他にも、地震発生から72時間に報道されたNHKのニュース映像を時系列に紹介した映像展示や発生直後から現地で取材に当たっていた記者たちの取材メモ、震災で失われた街の復元模型など、さまざまな視点で「あのとき何が起きたか」を改めて知ることができる。また、福島第一原子力発電所事故についても、日本科学未来館の監修のもと、NHKスペシャルの番組映像や避難者の証言などを交えて、当時の状況と原発事故の影響をひも解いていく。

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