世田谷パブリックシアターでは2014年からレバノン出身の気鋭の劇作家ワジディ・ムワワドの“「約束の血」4部作”をシリーズで上演してきた。これまでの『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』は数々の演劇賞を受賞した。今回はその待望の第3弾となる。過去2作に引き続き、上村聡史が演出を手掛ける。
ムワワドはレバノン生まれで内戦を経験。フランス、次いでカナダに亡命後に再びフランスへ渡り精力的な演劇活動を続けている劇作家。自己の体験から戦争を背景に自らのルーツをたどる作品を多く発表しているのだが、代表作である“「約束の血」4部作”は家族をテーマに扱った作品群で、その中の一作が2006年に創られた『森 フォレ』。
母の死により自らのルーツをたどることになる少女の成長が、人々が繋げる「血の創生」に着目しながら、6世代と2大陸にまたがる壮大な時空間の中に立ち上がる構成。時は現代からベルリンの壁崩壊、第二次世界大戦、第一次世界大戦、普仏戦争、産業革命後のヨーロッパまでさかのぼり、二つの世紀をまたぎ、娘から母へ、母から祖母へ、祖母からまたその母へと、戦争の世紀に押しつぶされた声なき人たちの声を現代に響かせる。
140年にもわたる“血”の物語をひも解くフランスの古生物学者役を成河が、母の死をきっかけに自身のルーツをたどる女性を瀧本美織が演じる。