公開中の映画『本心』の舞台挨拶が9日、都内にて行われ、俳優の池松壮亮らが登壇。急速に“AI”が広まるタイミングで公開された本作を語りつつ、テクノロジーに翻弄される登場人物たちに思いをはせた。
作家・平野啓一郎の同名小説を映画化。亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせることを選択する青年と、彼を取り巻く人間たちの“心”と“本質”に迫るヒューマンミステリー。
原作と出会い、企画から石井監督とともに作品をけん引してきた主演・池松は、世界的に生成AIがトピックスとなっているこのタイミングでの公開に感慨深げ。
実際の母とVF(ヴァーチャルフィギュア)の母を演じた田中裕子のアドリブや、三吉彩花とのダンスシーンなど、まさに役者が人間であるからこその深い芝居を振り返っていた池松。
幼なじみ・岸谷役の水上恒司の演技もたたえていたが、池松演じる主人公を「リアルアバター」のバイトに誘いながら自身は道を踏み外していくという役どころに「今、特殊詐欺のニュースを見るたびに、岸谷を思い出してしまう。水上くん大丈夫かなって」と冗談めかし、会場も大笑い。
水上も苦笑しつつ、先日行われたイベントでのVRゴーグル体験を振り返り「僕の世代は小さいころからスマホがあった世代なんですけど、現実なのか仮想なのか分からなくなっていく感覚があって。今から生まれてくる子どもたちが現実との境目をしっかりできるようになってほしい」。
映画界の時代の変化を聞かれた田中裕子が、吉田喜重監督の『嵐が丘』(1988年)で「2日も“霧待ち”をしていた」というエピソードを語ると、石井監督も「今だったらVFXで、となる」と当時にあこがれを見せつつ「軸は変えずに新しい技術を取り入れることを考えないといけないと思いました」と語っていた。
この日の登壇者は池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子、石井裕也監督。