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同じ空間で仲間たちと休み方をシェアする“逗留2.0” 白馬のシャレーは、宿泊のイメージを変える

2019.08.04 Vol.Web Original

 「宿泊の概念が変わるかもしれない」。取材を終えて、そう感じたほどだった――。

 皆さんは、シャレーという宿泊施設を知っているだろうか? 端的に言えば、山小屋風の宿泊施設。言葉そのものは、スイスのアルプス地方に存在する大きな屋根の突き出た住居、またはそれを模した山荘を意味する。

 ややもすればロッジやペンションと混同しがちだが、実際にシャレーを訪れるとまったく似て非なるものだと気が付く。より私邸のようなたたずまいが強く高級感が漂う。国内にもいくつかシャレーが集うスポットがあるが、中でも“和田野の森”と呼ばれる長野県北安曇郡白馬村・和田野周辺は、外国人からも支持を集める人気のシャレーが並んでいる。

草木豊かな樹林地の中にたたずむシャレーは、まるで海外の映画に登場しそうな荘厳さと落ち着きを誇る。ジェームズ・ボンドやルパン三世が忍び込みそうな豪邸である。

 

 和田野にシャレーを構える、そのほとんどは外国人だ。白馬で休暇を優雅に過ごすために、土地を購入し、所有者それぞれが思い思いにリラックスできるようにデザインをしている。個性豊かなシャレーが、ぽつぽつと森の中に存在する光景は、まさに別邸という言葉が相応しい。この時点で、軒を連ねて密集しがちなロッジやペンションとは趣き異にする。解放感が桁違いなのだ。

 当然、彼らは自国に戻らなければならない。そのため一年の大部分は主人のいない空き家となる。そこでシャレーの主たちは、自分たちが過ごしていない期間を、白馬ホテルグループに委託することで、旅行者に宿泊先として提供しているのだ。

 上写真は、「フェニックスワン」というシャレー内部だが、その広さと内装デザインに目を丸くしてしまう。システマチックなファシリティに加え、空間のデザインが外国のそれである。天井の高さや開放感のある大きな窓、そしてテラス席や書斎など、生活のギアを変えられるようなスペースが備わっている。俗っぽく言うなら、とにかく“かっこいい”のだ。

 

 高さを生み出すことで白馬の自然をより堪能できるように、リビングは二階に作られている。一階はというと、ガレージ、トレーニングルーム、サウナ室……「渡辺篤史の建もの探訪」みたいになってしまっているが、誰かに伝えたくなるほど機能的かつ居心地がいい。バーベキューアリアを備え、システムキッチン完備、ベッドルーム4部屋、4バスルーム、5トイレ……広さにして実に283平方メートル(三階建て)、約170畳分の広さを誇る。

 「でも、お高いんでしょ?」。

 通販番組よろしく、誰もが気になるところだろう。ハイシーズンともなれば高騰かつ予約困難だが、レギュラーシーズンやオフシーズンとなれば、そうでもない。最大10人で宿泊できるため、人数が増えるほど割安に。仮に10人で宿泊するなら、シーズンと日数にもよるが一人当たり一泊10000円~20000円で収まるというから驚きだ。しかも夕食のBBQセット込みで、だ。

 「先日は、ノートパソコンを片手にノマドワーカーのグループが宿泊されました。緑に囲まれた空間で仕事をして、夜はお酒を飲みながら仲間と自炊をして楽しむ。リラックスしたい方は、岩岳エリアや栂池エリアに行ってのんびり自然を眺める……そういった使い方をされる方もいます」

 そう教えてくれたのは、白馬ホテルグループの末川さん。また、「恩師が喜寿を迎えたということで、先生を祝いつつ高校時代の同窓生が集うなんてケースもありました」というように、宿泊&滞在のスタイルは多岐にわたっているから面白い。

こちらは「AMO54」というシャレー。基本的にすべてのシャレーがオシャレ&優雅

 

 住んでいる場所がバラバラでも、シャレーという宿泊施設を利用すれば、現地集合、現地解散が可能。宿泊代表者が白馬にある窓口で鍵を受け取るだけなので、煩わしいチェックインやチェックアウトの手続きもない。シャレーの宿泊施設の類型は、旅館業法における簡易宿所営業に相当するため、民泊とは異なり、都道府県知事(または市長、特別区では区長)の許可を受ける必要がある。民泊のような自由性がありながらも、トラブルが散見する民泊とは異なる法律で括られているため安心感が高いこともポイントだ。「宿泊に関する相談などあればお気軽にご相談ください。料金設定など、なかなか分かりづらいと思いますので」と優しく説明してくれる末川さんをはじめとした、白馬ホテルグループのサポートも心強い。

 

「AMO54」にはキッズルームがある。このように和田野に集うシャレーは、一つ一つ特徴が異なる。ママ友が子どもたちとともに宿泊する、ビジネスマンが合宿感覚で宿泊する、気の合う飲み友達と思い出作りのために宿泊する……そういった十人十色の過ごし方が、ここではできるというわけ。言うなれば、同じ空間にいながらにして、気の合う友人たちと“休暇をシェア”しているようなものだ。

 何より日々の暮らしの快適さを追求したかのような洗練された空間設計が、素晴らしい。周辺には大自然が広がり、深呼吸するだけで心が癒されるような風景が眼前に迫る。こういった場所で一呼吸置きながら仕事をしたら、実は都会にいるよりも効率的かつ生産的な労働につながるのではないかと想像してしまった。ここでは、驚くほどにゆっくりと、思う存分、自分の好きなように時間を使える快適さが備わっている。

 昨今、働き方改革が叫ばれ、それにともなう休み方も注目を集めつつある。一方で、そもそもオンとオフの切り替えができない人も少なくない。「みんなに迷惑がかかりそうだから」という理由から有休を取得しない人は、いまだ一定数いる。オンとオフの切り替えが苦手な人ほど、オフになったときに思う存分羽を広げようとする。も、かえって疲れてしまうなんてことは珍しくない。

 よくよく旅行というものを考えたとき、我たちは気が付くと、あれもこれもと詰め込んでいるような気がする。「せっかく来たんだから」、「ようやく休みが取れんたんだから」。まるで「バイキングに来たのだから限界まで食べないともったいない」という心理が働き、休みに来たはずなのに、休めていない状態に陥ってしまうなんてことは、“旅行あるある”だ。

アメリカのホームドラマでみたことがある! 白馬のシャレーのキッチンは、ことごとく広い

 

 ともすれば、きっちり休むという快適性を重視した旅行があってもいいはずだ。あえて予定を詰め込まず、のんびりと滞在する……昔でいうところの長逗留のような過ごし方があっていい。でも、何もないとつまらない。だから、多くの人は旅先でせっせせっせと動き回る。そして、疲れる。

 白馬のシャレーは、新しい宿泊をイメージさせるものだ。雄大な自然に加え、ともに過ごす友人や仲間がいる。書斎に籠って仕事をしたい人は、すればいい。昼間からビールを飲みたい人はテラス席で鳥のさえずりを聞きながら飲めばいい。絶景を見たい人はゴンドラに乗って北アルプスを眺めに行けばいい。しかも、それらの行動は気分次第ですぐに方向転換できてしまう。「いいアイデアが浮かばない! だったら、山でも見に行こう」。そんなウルトラCの休み方。休暇をシェアするという宿泊スタイル。夜は、今日一日のそれぞれの行動を報告しながらワイワイと飲めばいい。これはもう“逗留2.0”だ。

 今年7月には、岩岳エリアにある“天空のカフェ”『白馬マウンテンハーバー』の隣に、屋外Wi-Fiシェアワーキングスペースが誕生する。

 Aさん「今日はどんな予定?」

 Bさん「天気が良いから、 白馬マウンテンハーバーで昼食を食べて、そのまま標高1300メートルで仕事しようと思う」

 Aさん「オッケー。俺たちはまずはリビングでビールを飲んでから考えることにするよ。もしかしたら合流するかも」

 Bさん「はいよ~」

 Cさん「私は昼過ぎまでテラスで本を読むことにする」

 

 白馬のシャレーは、そんな働き方と休み方ができる。新しい旅行の形、いや、これは旅行なのか? 旅行に非日常を求めない。暮らしの延長線上に、いつもとは違う光景――“異日常”を求めたい方は、きっとハマると思う。

 

(取材と文・我妻弘崇

白馬の夏は、無理して人に合わせる必要なし! もう「夏山=トレッキング」なんて言わせない

2019.07.28 Vol.Web Original

 夏休みが始まる――。

 「今年の夏は、どこへ出かけようか」。そんなことを考え始めている人は多いはず。以下の写真を見てください。

 山小屋? ……じゃない! ここは標高1300メートルにあるベーカリー&テラス『白馬マウンテンハーバー』。昨秋、白馬岩岳エリアにオープンした、ニューヨークで20年以上も愛される老舗『ザ シティ ベーカリー』の焼きたてパンと淹れたてのコーヒーを、北アルプスを眺望しながら楽しめる“天空のカフェ”だ。控えめに言って、夏山の魅力を最大限に楽しめる最高のスポット。東京からは、北陸新幹線を利用すれば、バスを乗り継いで約2時間半。高速バスの場合、バスタ新宿からで約5時間で行くことができる。

 実は今、長野県・北安曇郡白馬村が劇的に変わりつつある。

 白馬村と言えば、1998年の長野冬季五輪の際は、白馬ジャンプ競技場にてジャンプ競技が行われるなど、ウインタースポーツのメッカ。原田雅彦の祈るような名言「ふなきぃ~!」も、この地で生まれたほどだ。そんな“冬”のイメージが先行する白馬だが、「(雪を)脱いでもすごいんです!」とばかりに、現在グリーンシーズン(夏場)の白馬は、K点越え連発のコンテンツが揃いつつある。

 先の『白馬マウンテンハーバー』は、麓からゴンドラに乗ればすぐにアクセス可能。つまり、サンダルやパンプスでもこの絶景を楽しめるというわけ。夏山と聞くと、「登るのが面倒」「装備を集めるのがイヤ」なんて声も聞こえてくるけど、白馬では心配無用。ゴンドラに乗れば、すぐさま冷たいビールと焼きたてのパンを片手に、大パノラマを満喫できてしまうのだ。最高すぎます。

 しかも、『白馬マウンテンハーバー』の近くには、白馬村を一望できるウッドデッキや、ワンちゃんと一緒に遊べるドッグランも併設。下記動画のようにマウンテンバイク(レンタル可)を載せれば、山頂1272mから標高差521mを誇る全長3672mのダウンヒルコースを駆け降りる絶景のマウンテンサイクリングコースまで楽しめる。何度でも言いたい。控えめに言って、今や白馬は夏山の魅力を最大限に楽しめる最高のスポットなのだ。

 

白馬がグリーンシーズンに力を入れるワケ

 なぜ白馬はグリーンシーズンに力を入れ始めたのか? その背景には、春から秋にかけた“オフシーズン”のコンテンツ不足による低稼働や、低迷する国内スキー・スノーボード参加率など、リゾート地として冬に頼りすぎる傾向が強かったことなどが挙げられる。

 また昨今、「白馬はオーストラリアを中心としたインバウンド人気が高い」という話を聞いたことがある人もいるだろう。外国人観光客は、基本的に短期滞在はしない。白馬のようなマウンテンリゾート地ともなれば、最低2週間は宿泊する長期滞在も珍しくない。となれば、飽きられないためのコンテンツ拡充の創意工夫が必要となる。グリーンシーズンを拡充させることは、そのままウィンターシーズンにおける観光客の回遊率向上にもつながる。実際、『白馬マウンテンハーバー』は、冬場も開放しているほどだ。

 白馬村と隣接する小谷村・大町市のスキー場は5年前から“HAKUBA VALLEY”と銘打ち、さまざまなプロモーションを展開中だ。2016年には共通自動改札システムを導入し、すべてのゲレンデを、単一チケットを利用して滑走できるようになり「日本最大のスキー場」として生まれ変わるなど、国内屈指のマウンテンリゾートとして再開発が進んでいる。前述した『白馬マウンテンハーバー』は、白馬の岩岳エリアに誕生……そう、白馬の進化は、これだけではない! その他エリアにも新しいコンテンツが、続々と誕生しているのである。

 こちらは栂池高原エリア(標高約800メートル)に登場した、フランス発のアドベンチャー施設『白馬つがいけWOW!』。昨夏オープンから3か月で8000人の来場者を記録し、今年の夏も大注目のスポットだ。岩岳エリア同様、麓からゴンドラが発着しているのでご安心を。

 エアチューブに乗って滑り降り、エアバックの上にジャンプをする絶叫系スライダー「トビダス」、ライフジャケットをつけてアスレチックや滑り台を満喫できる長野県初の水上フロートアクティビティ「ポチャダス」、その上には 地上10メートルの高さから片道約140メートルの湖上を往復する日本初の空中自転車綱渡り「コギダス」が備わる。これらを含む9アクティビティ・50種類以上のコンテンツが、標高約800メートルに集っているのである。適度に体を動かすからほどよく汗をかき疲れるんだけど、空気が美味すぎるので、いつもより疲れた気がしない!(きっと気のせい) 「子ども向けでしょ?」なんて思った方、とんでもございません。大人の方がハマってしまうと評判なくらい。

 さらに驚くべきは、『白馬つがいけWOW!』のある地点からさらにゴンドラリフト(約20分)とロープウェイ(約5分)で上がると、手つかずの大自然に囲まれた栂池自然園(標高約1800メートル)に、らくらくと到着できるという点。

 見よ、この美しい絵はがきのような景色を! ボードウォークが設置されているため、こちらもサンダルで散策することができてしまう。「夏山? トレッキングするくらいしかないじゃん。それに上まで登るの面倒だし」……なんて、もう言わせない。これほど選択肢が豊富で、自分に合った夏山の楽しみ方ができるなんて、夏山の概念を変えてしまうほどのインパクトだろう。

 7月19日からは、国立公園内で動植物や自然について学べる教育プログラム『MIKKETA!(ミッケタ!)』も開始する。

 

個人に合わせた楽しみ方ができる白馬の夏

 例えば――。3世代で来た家族が、パパとママと子どもは『白馬つがいけWOW!』で思う存分遊んで、おじいちゃん、おばあちゃんは自然園へ動植物観察に出かける。「3時間後にゴンドラ前で待ち合わせね」なんて具合に、家族の中でも違う楽しみ方ができれば、誰かに負荷をかけることも少なくなる。

 友だちグループ数人で来たとして、「本当は気が乗らないけど、みんなが賛同するから仕方ない……」なんて考えていることがバレないように作り笑いをして、無理に合わせる必要もない。それぞれが、白馬の絶景に囲まれながら、好きなアクティビティを満喫すればいいのだ。

 魅力を最大限に活かすということは、それだけ選択肢が増え、何人で来ても満足度が高くなるということ。そんな夏山の魅力を最大限に開放した白馬のコンテンツ作りは功を奏し、昨年のグリーンシーズンの来場者数は過去5年で最高を記録したほど。

 なお、こちらは八方尾根エリアにある「八方池」。さらに7月下旬には、1400mに位置する白馬八方尾根のうさぎ平テラスの屋上に、ビーチリゾートをイメージした絶景リラクシングテラス「HAKUBA MOUNTAIN BEACH(白馬マウンテンビーチ)」をオープン予定……「どんだけコンテンツが豊富なんじゃい!」と突っ込みたくなるほど、白馬は自然スポット、アクテビティスポットが充実しつつある。

 今年は、昨年を超えるグリーンシーズンの来場者を目指しているそうだが、もはや射程圏内にあると言っても過言ではないだろう。その魅力は、「行けばわかるさ、バカヤロー!」である。

白馬村はエリアによって特色が異なり、エリアごとに魅力的なコンテンツが誕生しつつある。各エリアへはバスなどが運行する

 

 夏の白馬の進化は、まだまだ止まりそうにない。夏山の魅力を知らない人にこそ訪れてほしい。きっと、そこには見たこともない景色が広がっているはずだから。

(取材と文・我妻弘崇)

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