もはや連休なんて何も嬉しくない。
どこにも出かけられないし、誰とも会わないし、家から一歩も出ず一言も発しないまま、ただただ時間が経過する。
暇だから仕事をする。
結局寝るか仕事をするかで一日が終わる。
地方に住む家族に今どうしても会いに行く用事はないし、友達もいないことはないが、もし私がコロナにかかっていたとして彼ら彼女らを濃厚接触者にするのは気がひける。どうせ一人の人生だから、なるべく他人に迷惑はかけたくない。
オリンピックは面白かった。どの時間帯にテレビをつけても、最高峰のスポーツが観戦できるのはすごく楽しかった。でもその前の4連休と、終わってからの3連休、私はただ家で麺類をすすり、誰とも会話をせず、どこにも出かけなかった。
SNSには家族や友達と楽しく過ごしている人々の写真があがっていて、なぜ自分はこんなに孤独なのだろうかと思った。
遊んでいることが羨ましいのではなくて、このご時世だからこそ一緒にいたいと思える家族や仲間がいることが羨ましく、また、そう思える人がいない、そう思ってくれる人が身近にいない自分の人生が、空虚に思えた。
そうだ、無理やりにでも家族を作れば、私の孤独はなくなるのではないか。
そう思い、三連休の最終日、結婚相談所に行ったのだ!
結婚がしたいわけではない、新しい恋がしたいわけでもない、ただ、人生を変えたい。
本当に恋愛や結婚がしたい人には申し訳ないけれど、結婚したら人生が変わるかもしれないというわがままな動機で。
通りに面した大きなビルの1フロアの一角、某結婚相談所は、コロナ禍の三連休最終日にも関わらず、活気づいていた。
と言っても、一人一人ブースで区切られているので、視界には誰一人見えないのだが、何人もの人が同時に話している声だけは認識できた。
ブースに案内されると、50代くらいの落ち着いた女性がやってきて挨拶をし、まっすぐに私の目を見つめながらこの相談所のことを丁寧に説明し、今日どんな思いがあってこの場に来たのか質問してきた。
連休で誰とも話さず孤独感が募ったこと、孤独から自分の人生は本当にこれでいいのかを迷い、自分を変えたくて来たこと。
そんなことを言われても困るであろう私の話を、担当の方は真剣に耳を傾けて、そして、私の身を案じてくれた。
こんなに人に優しくされたのはいつぶりだろうと思い、涙がこぼれそうになったのを我慢した。
ただ、私はどうしてもここで言っておかなければいけないことがあった。
それは、私の仕事のことだ。
ソフト・オン・デマンドは意外とちゃんとした会社だし、クレジットカードも作れるし、賃貸契約だって問題ない。
ただ、結婚をするにあたって、アダルトビデオや風俗の仕事に関わっていて(関わるどころかどっぷり浸かっている)、ましてや本名も顔も出しているので、相手にも迷惑をかけることがあるかもしれないということを了承してもらう必要があると思った。
さらに結婚相談所の信用にも関わることだし、大人として真正面から確認するべきだと思ったのだ。
「職業に貴賤はないと私は思うんだけど……」
その相談所の案内動画を15分見たところで、担当の方が上司に確認を取ってきてくれて、私は正式に入会をお断りされた。
転職する予定はないのか、転職したらもう一度検討してほしい、もうこれからどんどん成婚しにくくなるから一日でも早く始めたほうがいい、とのことだった。
自分の職業が差別されたとか、ショックだとかは思わないが、自分のひとつひとつの選択の積み重ねがもう「結婚相談所に入会する」という選択肢を消してしまったんだなと思い、なんだか呆然として帰り道に泣いてしまった。
自分の人生を変えるにはもう、仕事で成果を出すか、仕事を辞めるかしかないようだ。
タイミングは重なるものだ。
この結婚相談所に行ったエピソードをTwitterでつぶやいた矢先、「コラム読みました、エロいですね」というDMを頂いてしまった。
今までのコラムを読んで、なぜそう思ったのか、なぜそう思わせてしまったのか、生理のこととか仕事のこととか、悩んで迷って考えたことを言葉にしていることが、なぜ「エロい」という表現につながるのか。
アダルトの仕事をしていて、普段から下世話な話をしている一部分しか見られていないのではないか。
そんな私が何を書いても無意味なのではないか、何を書いても伝わらないのではないか。
もう何も書けなくなってしまうじゃないか。
本当に、自分の人生を変えられるんだろうか?
……なんて、今の私はそんな絶望感も含めて、文章を書けるくらいには強くなったようだ。
結婚相談所に再び顔を出すことは、もうないと思いたい。