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「第10回腐り芸人セラピー」。“世界の悟り”矢作さんから学んだこと。〈徳井健太の菩薩目線 第153回〉

2022.11.30 Vol.Web Original

 

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第153回目は、感謝について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 コンビ間は、複雑怪奇。

 11月19日に放送された「第10回腐り芸人セラピー」(『ゴッドタン』)を経て、あらためてそんなことを思う。腐り芸人もついに10回。まさか岩井(勇気)が、フジテレビのお昼の顔になる日が来るなんて、月日の流れを否応なしに感じます。

(※来年1月からハライチは、フジテレビ平日昼の情報番組『ぽかぽか』のMCを担当することが決定)

 今回は、ティモンディの前田裕太とわらふぢなるお(ふぢわら・口笛なるお)が「腐り芸人セラピー」を受診。高岸(宏行)が活躍することで頭を悩ませているという前田の吐露は、多くのコンビが通る道かもしれない。

 「コンビ間格差」、「じゃないほう芸人」なんて言葉があるように、コンビやトリオの中で一人だけが目立ち活躍の場が増えることは、今では珍しいことではなくなった。澤部(佑)だけが目立っていたハライチもそうだし、吉村(崇)だけがバラエティに呼ばれていた、俺たち平成ノブシコブシもそう。

  コンビなんだから喜ばしいことのはず……なのに、釈然としない。悶々とするうちに、岩井(勇気)も俺もダークサイドへ堕ち、「腐り芸人」になっていた。前田もまた、同じように悩みを抱えているのだろう。

  収録中、俺が勝手に“世界の悟り”だと思っている矢作(兼)さんが、こんなことを話すシーンがあった。

  矢作さん曰く、小木さんの態度が悪いから、自分(矢作さん)に単独でCMのオファーが届くという。でも、矢作さんは自分のことを決して態度が良い人間だなんて思っていないそうだ。だったら、なぜ矢作さんにオファーが来るのか?

 「小木の態度が悪いから、横にいる普通の態度の俺が“良い人”に見えるだけなの。俺にCMのオファーが来るのは、小木のおかげなんだよ」

  そう説明していた。もう説法。仏様の考え方。

  片方が目立ってしまうことで、自分は置いてけぼりになっているんじゃないかという焦りが生まれるかもしれない。だけど、それは個性の違いにしか過ぎないわけで、違う考え方や違う人たちがいるから自分の価値が生まれたり、浮かび上がったりすることだってある。矢作さんみたいな考え方の人ばかりだったら、世の中から戦争はなくなるのに。

  矢作大師の説法は、これだけではない。

  わらふぢなるおの悩みは、「もうネタを作りたくない」というものだった。賞レースで結果を残している彼らの実力を疑う人はいないはず。テレビに出るためにネタを作り続けているものの、売り切れていないことに、内心穏やかじゃない。売れるために、また新たなネタを作る。だけど、過去のネタを越えるような面白いネタを作ること、あるいは作れるだろうと期待されることに疲れているという。ふぢわらは、(すでに作った)ベストのネタを超えることができないとこぼしていた。

  そんな二人を見て、矢作さんは、「今日の面白いは、明日の面白くないかもしれないでしょ。自分たちのネタは、自分たちが面白いと思ったからやっていただけだったけどなぁ」と、さらりと言う。誰かの期待なんてどうでも良くて、自分たちが面白いと思ったものをやれるだけで楽しい――。なんて素敵な考え方なんだろう。矢作さんがあと10人いれば、この世から争いはなくなるに決まっている。

  月並みな考えだろうけど、「感謝する」って気持ちはとても大事なことだよね。妬んでもいいし、さらけ出してもいい。でも、それ以上に感謝の気持ちがある、感謝できる環境があるから、物事は想像している以上にうまくいくのかもしれない。感謝こそ腐りの処方箋。“世界の悟り”矢作さんから学ぶことは多い。 

 

※徳井健太の菩薩目線は、毎月10・20・30日更新です

徳井健太の菩薩目線第99回 10年分のまい泉ダブル。俺が「弁当芸人」になっても温かく迎え入れてほしい。

2021.05.30 Vol.Web Original

 

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第99回目は、『ゴッドタン』の腐り芸人企画で発した一言について、独自の梵鐘を鳴らす――。

『ゴッドタン』の腐り芸人企画で、“出演しているボートレース番組の収録に行くと、いつも弁当がない話”をした。

 約10年間、番組に出演するも弁当があったことはなく、この番組は弁当が存在しないものだと思っていた。ところが、初めて来たゲストの楽屋に弁当があることを目撃してしまい、そのことをスタッフに告げると、「(俺の楽屋に)弁当を置き忘れていた」と恬然と言われた。

 待て待て待て。10年間、弁当を連続して置き忘れるなんて天文学的確率じゃないか。いくらなんでもそれは厳しいだろ。俺は驚愕し、その一部始終を『ゴッドタン』でお話させてもらった次第だ。

 その後、北九州にある「ボートレース若松」へ仕事で行くと、今まで見たことがないようなボリュームの弁当が置いてあった。「美味そう~」じゃなくて、「高そう~」という感想が、真っ先に出てしまうような弁当。 しかも、寿司なんかもついている。法要かと錯覚するくらい豪華だった。

 ん……? もしかして。『ゴッドタン』の放送後だから、「俺はイジられているのか……?」。無粋だとわかっていたものの、気になってしまった俺は恥を偲んで、「ゴッドタンの影響ですか?」と聞いてしまった。すると、関係者は「北九州ではタイムラグがあるため、まだ腐り芸人の回は放送されていない」と説明してくれた。

 邪推だった。そもそも「ボートレース若松」のおもてなしは厚く、昔から弁当が豪華なことは知っていたはずじゃないか。自分の発言に、おのれが踊らされてどうする。しっかりしろ、俺。

 ところが――。その後、今まで弁当が出ないような番組にも、弁当が出るようになっていた。なんだろう。すごくよくない。“すげえ弁当にうるせえ奴”って思われているんじゃないのか。俺は、不安にかられた。

 予感は、往々にして的中する。ABEMAの競輪番組のリハ入りに少し遅れてしまったときには、共演者の安田大サーカスの団長から「どうした? 弁当あるかないかで揉めたんか?」と声をかけられた。待て待て待て待て。弁当にうるさいキャラ、一歩手前……いや、なっているじゃないか。

 某日。

 俺は、『ゴッドタン』の番組内で、“とあるボートレース番組で弁当が出ない”としか言っていない。つまり、オブラートに包んで説明したわけだけど、その“とあるボートレース番組”が同じスタッフのままリニューアルすることになったという。そして、再び俺に出演者としてお呼びがかかった。

「弁当があったらどうしよう」。収録前からドキドキしていた。これまで10年間なかったのに「あるわけがない」、そう自分に言い聞かせていた。人間は変化を恐れる動物だ。だから、不安を感じる。このドキドキは期待なんかじゃなくて、純正の不安だ。“すげえ弁当にうるせえ奴”なんかになりたくない。

 恐る恐る楽屋の扉を開けると――、弁当が置いてあった。しかも、まい泉。しかも、二つ。やばいな。未知との遭遇だ。

 親に内緒で子猫を拾って帰ってきたような、誰にも相談も説明もできない緊張感を抱きながらリハに臨むと、「番組応援コメントが流れるので、それを選んでもらっていいですか」とスタッフから指示を受けた。ぶっちゃけ、それどころじゃない。 まい泉が二つも置いてあったんだぜ。

「は、はい」。気の抜けた返事をする俺。を見透かしてか、流れはそのままに、突然、スタッフが「ゴッドタンで仰っていましたよね。弁当がないって」と、ぶっこんできた。このタイミングで!? しかも、「そのことも踏まえてもらっていいですか」とまでリクエストしてきた。がっつり来てるじゃねえか。というか、どう踏まえるんだよ。

 虚を突かれた俺は、オープニングの挨拶で開口一番、「皆さん! 弁当がありました!」と爆発してみた。スタジオは大爆笑だった。待ってましたと言わんばかりに、弁当ネタをイジる、イジる。

 お笑いっていいなと思った。言ってしまえば、俺の発言は陰口みたいなもので、小言や愚痴の域を脱していない。俺の小言が独り歩きし、勝手に何かを生み出していくなんて想像できるわけがない。

 でも、お笑いにはそういう小さい奇跡が起こる。正々堂々と弁当(しかもまい泉!)を用意して、陰口に近い言葉を吐いた俺を呼ぶ――、そんな狂気の沙汰の喜劇。本来、「負」であったかもしれないことが、お笑いやバラエティでは「正」にひっくり返る。

 10年分のまい泉ダブル。俺は弁当にうるさいわけじゃないけど(なんだったらなくてもいい。ただ、「置き忘れた」の苦しい説明はひどいだろと話したかっただけ)、これは「どうするぅ!?」以来の天啓かもしれない。ある日突然、弁当ネタを話し始める弁当芸人になっていたとしても、温かく迎え入れてほしい。

 ゆくゆくは、『ノブコブ徳井とコラボ! ファミリーマート限定弁当』とか登場しちゃうのかな? そんな妄想のきっかけを与えてくれた『BOAT RACEライブ 〜勝利へのターン〜』さん、まい泉、美味しかったです。ごちそうさまでした。これからもよろしくお願い致します。

【徳井健太の菩薩目線】第64回 リモート収録は、「各番組の意地の見本市」だった

2020.06.10 Vol.Web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第64回目は、リモート収録から見えた各番組のこだわりについて、独自の梵鐘を鳴らす――。

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