岸田文雄首相が8月14日、会見を行い、秋に行われる自民党総裁選に出馬しないことを表明した。
岸田氏は会見の冒頭「今回の総裁選挙では自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりとを示すことが必要。そのためには透明で開かれた選挙、そして何よりも自由闊達な論戦が重要。その際、自民党が変わることを示す、最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くこと。私は総裁選には出馬しません」と不出馬の意向を表明した。
そしてこの3年間での経済政策、エネルギー政策、少子化対策、外交といった面において「多くの皆様のご協力によって大きな成果を上げることができたと自負をしている」と語る一方で「この間、旧統一教会をめぐる問題や派閥の政治資金パーティーをめぐる政治と金の問題など、国民の政治不信を招く事態が相次いで生じた。私としては被害者救済法の成立や政治資金規正法の改正など、課題への対応や再発防止策を講じることが、総理総裁としての私の責任であるという思いで、国民を裏切ることがないよう信念をもって臨んできた。特に政治と金の問題をめぐっては派閥解消、政倫審への出席、パーティー券購入の公開上限引き下げなどの判断について、ご批判もいただいたが、国民の信頼あってこその政治であり政治改革を前に進めるとの強い思いをもって、国民のほうを向いて重い決断をさせていただいた」などと旧統一教会と自民党議員との関係についての問題や一連の裏金問題について言及。
そのうえで「残されたのは自民党トップとしての責任。もとより、所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もない。今回の事案が発生した当初から思い定め心に期していたこともあり、当面の外交日程に一区切りがついたこの時点で、私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かって行きたいと考えている」とこの日に不出馬を表明した経緯を明かした。
そして「日本が直面する内外の難局は本当に厳しい状況。今般の総裁選挙では、我こそは、と思う方は積極的に手を挙げて、真剣勝負の議論を戦わせてほしいと思っている。そして新総裁が選ばれた後はノーサイド。主流派も反主流派もなく、新総裁の下で一致団結、政策力、実行力に基づいた真のドリームチームを作ってもらい、何よりも大事なのは国民の共感を得られる政治を実現することになる。それができる総裁であるかどうか、私自身も自分の1票をしっかり見定めて投じていきたいと思っている」と続けた。
今後については「政治家・岸田文雄として引き続き取り組まなければいけない課題がある」として、30年続いたコストカット型、縮小均衡型、デフレ型経済からの脱却を確かなものにするための経済政策、原発の再稼働・新型核新炉の設置を含めたエネルギー政策、ウクライナ問題の終結といった外交問題、日韓国交正常化60年となる日韓関係の正常化、戦略的互恵関係に基づいた日中関係、そして拉致問題の解決を含む日朝関係といった北東アジアの近隣外交の前進、憲法改正、政治改革といった諸問題を挙げたうえで「着実に実行していきたい」と決意を述べた。
最後は「私の政治人生、そして政治生命をかけて一兵卒として引き続きこうした課題に取り組んでいく。まずは9月までの任期中、総理総裁としての私の責任において、できるところまで最大限進めていく。そして今後とも能登半島地震からの復旧復興や南海トラフ地震や台風などへの災害対策をはじめ、最後の一日まで政策実行に一意専心であたっていく」などと語った。
その後の質疑応答では改めてこのタイミングでの表明について「日本が直面している内外の課題に取り組んでいくことは重要なことだが、だからこそ政治への国民からの信頼が大事だと思っている。こうした国民の共感や信頼を再び取り戻すことによってこそ、こういった政策は前に進めることができると信じている。そういったことから自民党は変わらなければいけない。そして“自民党は変わった”と示す第一歩が私自身が総裁選に出馬しない、身を引くことと判断して今回の決断に至った」と改めて、自民党の信頼回復の第一歩として自らが身を引くことを決断したことを説明。
後継者については「政治と金の問題、あるいは政治の信頼回復の問題については一連の改革努力が続けられてきたし、これからも続けていかなければならない。こうした一連の改革マインドが後戻りすることがないような方であってもらいたい」などと政治改革の推進を期待した。
また「政治と金をめぐる問題が発生してからトップの責任のあり方については思いを巡らせてきた」という中で「政治家としてやりたかったこと、そしてやるべきことを今一度しっかりと整理をし、そして方向誠意を示す。総裁選挙から撤退するにあたっても、それだけはしっかりと示していく。そういった政治家の意地みたいなものはあった。ですから、この国会が閉幕してから先送りできない課題について取り組み、結果を出していくことに専念した」と国会閉幕後の最低賃金の引き上げ、物価高対策といった経済対策、旧優生保護法問題への対応、NATOサミットへの出席といった外交、憲法改正へ向けての党内議論の整理といった政治課題を挙げたうえで「これだけはやったうえで、今回の不出馬表明をしたいということを強く思ってきた。先ほども申し上げた通り、政治家としての意地をしっかりと示したうえで、これから先を考えた場合に自民党の信頼回復のためには身を引かなければいけないということで、今回の決断をしたということ。ぜひしっかりとした総裁選挙を行い、選ばれた総裁は今度こそオール自民党で、ドリームチームを作って信頼回復に向けてしっかりと取り組んでもらいたい。そのための決断でありたいと思っている。タイミングということについては今言ったような思いで取り組んだうえで今日に至ったということ」などと語った。
自民党総裁選は9月に開催の予定で、これまで石破茂元防衛相、河野太郎デジタル相、茂木敏充幹事長、野田聖子元総務相、高市早苗経済安全保障担当相、加藤勝信元厚労相、小泉進次郎元環境相、小林鷹之前経済安全保障担当相といった多くの候補者の名前がメディア等で挙がっている。