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縮小する喫煙環境に挑む“初の公衆喫煙所ブランド”

2020.08.11 Vol.732

「喫煙所ってトイレと同じだと思うんです。例えば公園のトイレって使いたくないけど他に場所がないから…というイメージがありますよね。公衆喫煙所も快適とは言い難い場所が多いんです。ちゃんと喫煙所で吸っている人というのは、いわばマナーのよい喫煙者。なのに肩身の狭い思いをしながら環境の悪い喫煙所でセカセカと一服するこの状況は何とかならないかと(笑)」

 そう語る山下悟郎さん(株式会社コソド代表取締役)が立ち上げたのが「喫煙のあり方をイノベーションする」をコンセプトに掲げる公衆喫煙所『THE TOBACCO』。上質で落ち着いた店内空間、BGMや映像モニター、アート、ドリンクスタンドの併設など、快適にくつろげる喫煙空間を演出。スタッフによる清掃や排気・空調管理も徹底されており、利用は無料。

「空間デザインはもちろん、喫煙所としての機能面も追求しています。区の公衆喫煙所として認定を受けているので厳しい排気基準に準じているのですが、実際に検証し、喫煙所に出入りした後でも服などに匂いが残らない快適な環境を作るべく最大限のコストをかけています。またスタッフを置くことで、状況に合わせた排気・空調の調節やコロナ対策の人数制限なども行っています」

 社会性のある事業、そして文化的に面白いことをしたかった、と山下さん。

「健康増進法というパラダイムシフトによって、さらにシュリンクしつつある日本のタバコ文化をイノベーションできたら、と思ったんです」

 そこで都内数百カ所の喫煙所や、公衆喫煙所設置に関する法律や条例、自治体や商店街の方針などをリサーチ。

「自治体によって喫煙に対する見解がいろいろと違っていて、路上喫煙対策などのために喫煙所の設置に前向きで助成を行っている区もあれば、喫煙所そのものを閉鎖している区もある。出店場所としては、地域が設置を求めていること。そして喫煙所がなくて不便を感じている方が多いエリアであることを条件とし、まず神田と赤坂に出店しました。今年は東京駅近郊などさらに2~3カ所出店する予定です」

 喫煙者はもちろん、分煙化ができない近隣の店舗からも好評だという。

「以前アンケート調査を行ったときも、喫煙所設置については非喫煙者の方からも受容的な意見が多かったんです。受動喫煙やマナー・ルール違反、吸い殻ゴミなどの害が出ないように喫煙所はあったほうがいい、と。その地域と一緒によりよい環境を作っていくことが、公衆喫煙所の役割でもあると思っています。また、僕らの喫煙所は“月に2万人”を集めるファンクションとして、人の動線を作るという副次的な効果も期待できる。カフェなどとの共同出店や、大型商業施設の喫煙所のリブランディングなど、さまざまな展開を考えています」

 当初、マネタイズはそこまで意識していなかったと山下さん。

「有料会員制にすればという声もあったのですが、そもそも僕らの一番の目的は、クオリティーの高い喫煙所というブランドを作り、それを通して現状の喫煙環境にイノベーションを起こすこと。喫煙者の方にも非喫煙者の方にも応援していただいて、どちらにも快適な社会を作っていくことができればと考えています」

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