LiveUpCapsules は2002年の旗揚げ以来、全公演で多面舞台(多面客席)の舞台作りを継続して行っている。これは舞台と客席との垣根を取り払い、同じ空間にいる意識を共有することで観客の心を動かし、物語をうねらせ、劇場全体を巻き込んだ異空間を作り出すことを目的としたもの。
確かに通常の劇場の作り、いわゆる舞台がありその正面に客席があるといった環境での観劇に慣れている者にとっては多面舞台の公演は劇場に入った段階から緊張感とワクワク感が増幅。そこからすでに作品に取り込まれてしまっている人も多いのでは。
作・演出を務める村田裕子は2010年からは日本の歴史を題材にし、今の日本に通じる問題を抉り出すような作品を作り続けている。彼女が今回選んだのは「映画」。
敗戦の傷跡が癒えぬ日本で小津安二郎、溝口健二、黒澤明、木下恵介といった巨匠たちが腕を競う中で、自らを「日本軽佻派」と称し不治の病を抱えながら映画を撮っていた男がいた。戦後の日本の映画界に実在した映画監督とその代表作の撮影時の実話をもとに、生きることにも、その表現にももがいた男の生きざまを描く。