桟敷童子は1999年に結成された劇団で、作品の主だったものは演出を務める東憲司が幼少期に過ごした福岡の炭鉱の町・筑豊や霊場巡りで知られる篠栗での原風景をもとに、困難に立ち向かう人々の壮絶な生きざまを描いた骨太で猥雑な群像劇。
旗揚げ公演は辰巳倉庫内特設劇場。以降、いわゆる演劇を上演するための「劇場」ではなく、倉庫、廃映画館、野外といった、本来、演劇とは縁遠い場所での上演を続けてきた。
それは彼らが「追い求める風景」、つまりは東の作品の世界観を実現させるためで、劇団員たちは1週間から半月ほどの時間を費やし、総出で大掛かりな舞台を作り上げる。劇団が成長し、ザ・スズナリ、吉祥寺シアターといった通常の劇場で公演を行った際には劇場でありながら野外公演かと思わせるほどのリアリティーと迫力のあるセットを作り上げ、観客に「ここがスズナリか?」と思わせるほど。大掛かりな演出も変わらずで、とことん自分たちの色を貫き通す。
そして公演当日はスタッフだけではなく、役者たちも衣装のまま観客たちを迎え、終演後にはそのまま外に出て観客たちを見送る。観客側からすると開演時間からではなく、開場時間から作品が始まっているかのような錯覚にとらわれ、会場に入った瞬間から強引に物語に引きずり込まれていく。
今回は昭和初期の辺境の村が舞台。生贄や人身御供といった概念が否定された時代に、その風習や伝説が蘇る村の人々を中心とした群像劇が展開される。