昨年からの新型コロナウイルスの影響で世の中には「リモート」という便利なシステムが出来上がってしまった。実際に会わなくても仕事ができてしまうことに最初のうちは便利さを感じていた人も多かったのだが、今もそうなのだろうか。
演劇界でも苦肉の策として「配信」が取り入れられた。それはそれで地方在住のファンやさまざまな事情で劇場に来られない人たちに向けて今後も残っていくかもしれない。しかし演劇の醍醐味はやはり生身の人間が目の前で演じるものを見ることに他ならない。
そんな演劇体験を嫌というほど感じさせてくれるのが桟敷童子の舞台。作・演出の東憲司が作り出す物語は自身が幼少期に過ごした福岡の炭鉱の町・筑豊や霊場巡りで知られる篠栗での原風景をもとに、困難に立ち向かう人々の壮絶な生きざまを描いたもの。そして劇団員全員で作り出す大掛かりなセットは劇場でありながら野外公演かと思わせるほどのリアリティーと迫力のあるもので、劇場に入った瞬間から観客を強引に物語に引きずり込んでいく。
今回は「二又トンネル爆発事故」という1945年に福岡で実際に起きた事故をモチーフとした最新作。こんな時代だからこそ、究極の演劇体験を!