俳優の高知東生が、文芸誌『小説宝石』で発表した短編小説をまとめた小説集『土竜(もぐら)』(光文社)が25日に発売される。
2016年9月、覚醒剤取締法違反などの罪で懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けた高知。俳優の仕事、妻、家庭……すべてを失った高知は、依存症からの脱却を目指して自らの過去と向き合うことになる。2020年9月、執行猶予が明けた高知が小説を発表すると、自身の半生を包み隠さず綴った筆致に絶賛の声が寄せられた。
本の帯には、直木賞作家・重松清氏がその内容を「このようにしか生きられなかった男と女の、哀しさと愚かさと愛おしさが胸に迫る。すべてを曝け出す覚悟と、さらけ出したことに甘えない覚悟とを胸に刻んだ人――すなわち「作家」の、始まりの一冊なのだ」と激賞するコメントも。
侠客の父、ネグレクトの末自死した母、そして全財産を握りしめて上京した男の行く末とは……。短編6篇を収録し、タイトルの『土竜』には高知の「生涯土の中に埋めておこうと思った話がひょっこり顔を出した。恥だと思って隠し続けてきた心の内を小説という形で表現できた。土竜なりに一生懸命生きてきたなと思う」という心情を込めた。