表紙カバーに個性的な書体で書かれた「黒魔術」という文字を目にして、一体何の本なのだろうと興味をひかれた。実用書やライトノベルかと思いきや、さにあらず。呪術や占星術、数秘術、人相・手相術などの「おまじない」から、ミャンマー政治の舞台裏を探るという奇想天外なルポであった。
新聞記者として、途上国や新興国の駐在を歴任してきた著者。最後の赴任地であるミャンマー最大の都市ヤンゴンで、時のテインセイン大統領の正確な「生年月日」が分からないことがきっかけで、その理由に「黒魔術」の存在があることを知り……というのが第1章のあらすじだ。
その後、2年以上経過しても「生年月日」は不明なまま。情報省の幹部に「黒魔術」のやり方を聞き、占星術師組織の会長、テインセイン大統領の兄、テインセイン政権の「お抱え占い師」だったという人物、そしていよいよ念願のテインセイン大統領本人のインタビューへ。宗教観や死生観、占いの知識にふれながら迫る真実とは?
「黒魔術」をひもとけば、不思議の国ミャンマーがより身近に思えてくる。