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ありがとうBiSHロス芸人。アインシュタイン稲ちゃんは、やっぱり男前なんだ。【徳井健太の菩薩目線 第184回】

2023.10.10 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第184回目は、「BiSHロス芸人」について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 9月21日に放送された、『アメトーーク!』の「BiSHロス芸人」をご覧になった皆さま、ありがとうございました。そして、今もまだ心のどこかにBiSHがとどまり続けている皆さま、一緒にがんばりましょう。

 どの番組に出るときも緊張感を抱えているけど、『アメトーーク!』となると、いつも以上に心臓がバクバクしてしまう。自分が好きなこと、自分が思い入れを抱いているものについて話す――、それってとても責任をともなうものだから。

 端から見ていると、好き勝手なことを言っているように見えるかもしれない。だけど実際には、公共の電波を使って、自分の思いを吐露したり、誰かの思いを乗っけて勝手に語ったりすることは、ものすごく神経を使う。結局のところ、自分が思っていることをそのまま吐き出す以外に解決策はないと分かっていても、うまく吐き出せるのか怖くなる。

 だからなんだろう、無事に終わったときの安堵感と言ったらない。自分が思っていたことを伝えることができ、収録そのものも皆さんのおかげで盛り上がったという実感があると、めちゃくちゃうれしいんです。

 興奮冷めやらぬまま、収録終わりにBiSHロス芸人の面々とお酒を飲みに行った。『アメトーーク!』収録後の飲み会でお酒を飲んでいると、いろいろなことを思い出す。ももクロ芸人として登場したものの、ももクロのヒストリーをうまく伝えることができずに後悔ばかりが頭によぎった反省酒。蒙古タンメン中本芸人として登場し、五明(グランジ)や向さん(天津)と夢が叶った歓喜酒。そして、前回の「BiSHドハマり芸人」でアインシュタインの稲田が放った覚悟酒。

 あの日、稲ちゃんは、「なんで、もっと頼ってくれないんですか? 今日の収録で『稲田頼むぞ』って言ってくれたら、もっとボケたし……俺、もっとやれますよ」と、酒を飲みながら話していた。

 少年マンガの主人公みたいなことを口にしていた稲ちゃんは、もちろん、今回の「BiSHロス芸人」にも名を連ねていた。

 をよぎり、今日の収録前は、4年前に放送された「BiSHドハマり芸人」のときのことを思い出していた。

 よく覚えている。

 BiSHロス芸人たちと、「今日の収録は良かったですね」なんて話をしながら、ノブさんの近況を聞いていると、あっという間に1時間くらいが過ぎた。そろそろお開きという雰囲気が漂うと、稲ちゃんが突然、「前回飲んだときのことを覚えてますか」と口を開いた。

「めちゃくちゃ覚えている」と、ノブさんも俺もうなずいた。覚えているどころか、ずっと気になっていた。

「だから、今回、僕は自分から前に出たんです」

 そう稲ちゃんは思いを吐き出した。収録中、「今日の稲ちゃんはものすごくボケるな。かっこいいなぁ」と感心していた。そうじゃなかった。前回のことを稲ちゃんも覚えていて、その思いに決着をつけるための今日の収録だったんだと思うと、僕たちは泣いていた。

 前回の反省を自分で越えていく。分かっているけれど難しい。できない。でも、稲ちゃんは4年越しで実現させた。あのときの忘れ物を取り戻したんだなって。

 飲み会が始まって、本当はすぐにでもその話を切り出したかったと思う。だけど、調子を合わせて一緒に笑って、ここぞというときにぶちまける。やっぱりアインシュタイン・稲田直樹は、男前だなと思った。本番前に、「あのときのことを覚えてますか。だから、今日は自分で攻めます」と伝えることだってできたはずなのに。心に秘めたものを抱えながら収録中、ずっと一人で戦って、俺たちを盛り上げてくれていたんだって思うと、言葉にならない。ありがとう、稲ちゃん。あなたは戦士です。

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