猫写真家の沖昌之が、累計発行部数5万部を突破した写真集『必死すぎるネコ』の第2弾、『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』の発売を記念したトークイベントを新宿の紀伊國屋書店新宿本店にて行った。イベント冒頭で、前回の写真集を制作する前の段階で、担当編集者から手塚治虫の漫画『火の鳥』のように「○○編」を重ねながら超大作化させる壮大な構想を提案されたことを明かした沖。当初はあまりの熱意に戸惑いつつも、結果的にその写真集のヒットがプロの猫写真家として活動を続ける力になったそうで、「そういう意味で僕にとって『必死すぎるネコ』は大事なターニングポイント」と語った。この日は『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』に収録した写真の撮影エピソードを中心にトーク。
BOOK タグーの記事一覧
愛国を生業にした“残念な”人びとの群像劇『愛国商売』
メディア出演も多い気鋭の若手論客、古谷経衡が初めて手がけた長篇小説作品『愛国奴』が、『愛国商売』に改題されて待望の文庫となった。主人公の南部照一は大学卒業後、茨城県取手市で私設私書箱サービスを営んでいる。飼い猫と車と読書を愛する在宅ワーカーだった照一が、SNSで出会った書店員に誘われて保守系言論人の勉強会に参加し、中堅警備会社の懸賞論文に入選したことで「愛国ビジネス」渦巻く保守論壇の世界に足を踏み入れて……。著者自身の実体験をもとにした小説とあって、トンデモ陰謀論を振りかざしてネット右翼に称賛される“残念な”人々のおかしくも哀しい姿がリアルに描かれている。
その男、孤独につき『小説 孤独のグルメ 望郷篇』
10月からSeason8の放送が始まったドラマ「孤独のグルメ」。井之頭五郎といえばすっかり松重豊のイメージが板についている人も多いだろう。
ドラマ版の原作『孤独のグルメ』は原作・久住昌之、作画・谷口ジローによる漫画だが、この漫画の連載を立ち上げた編集者が本書の著者・壹岐真也である。WEB媒体「日刊SPA!」で連載された漫画版を底本としたオリジナル小説をまとめたものが『小説 孤独のグルメ 望郷編』だ。
小説版は、設定こそ井之頭五郎だが、漫画版にもドラマ版にも依拠しないオリジナルな魅力にあふれている。たとえば小説なのでドラマや漫画よりどっぷり五郎のモノローグで進行していくのだが、どこかで聞いたような唄やフレーズが度々挟み込まれるあたり。フリーランスとして1人で仕事をしている五郎の頭の中には、常に心のつぶやきに加え入れ替わり立ち替わりいつかの回想や音楽や言葉が鳴っているのだろう。分かる。日常的に孤独に親しんだ経験があるならば理解できるはずだ。
もちろん食べたことがないのに〈懐かしい〉食べ物の数々も健在。著者の分身かとも思うが、酒を飲まずにカルピスウォーターを愛飲しているところは、パラレルワールドを生きる五郎というべきか。マルコヴィッチならぬ井之頭五郎の穴のような読書体験だ。
角川文庫『ロウソクの科学』ノーベル化学賞効果で緊急重版!
スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池を開発し、2019年のノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローで名城大教授の吉野彰氏。記者会見で化学に興味を持ったきっかけとして挙げた英国の化学者ファラデーの著書『ロウソクの科学』が、ノーベル賞効果で書店からの注文が相次ぎ、緊急で2万部の重版を決定した。1860年に子どもたちに行った講義を収録した同書は、たった1本のロウソクを題材にさまざまな化学現象を解説する。吉野氏は小学校の担任からこの本を勧められ、「化学っておもしろそうだな」と思ったという。
2016年に医学生理学賞を受賞した東工大栄誉教授の大隈良典氏も、自身の原点として同書を挙げている。角川文庫版のほか岩波文庫版『ロウソクの科学』や角川つばさ文庫『ロウソクの科学―世界一の先生が教える超おもしろい理科―』も好調だ。
編集者・島本脩二の「本作り」に触れる
小学館の編集者として矢沢永吉『成り上がり』や『日本国憲法』などさまざまなベストセラーを生み出した編集者・島本脩二。本展では本を作るうえで欠かせない印刷、紙、製本などとの関わりから編集とデザインの役割を伝える。学生が自作した課題書籍『二〇××年の私』約180点や島本が編集した書籍約140点も展示され、自身の仕事と学生の作品を通して島本の思想と実践に迫る。
季節の不調に摂り入れたい『食薬習慣』
腕利き宣伝マンが猛プッシュ「コレよ、コレ!」
【オススメ書店イベント】『必死すぎるネコ ~前後不覚篇~』刊行記念イベント
5万部のベストセラーとなった写真集『必死すぎるネコ』。待望の第2弾『必死すぎるネコ ~前後不覚 篇~』(辰巳出版)の刊行を記念して猫写真家・沖昌之が登場するイベントが2カ月連続で行われる。前作にも増して一生懸命なのになぜかおかしいネコたちをとらえた写真集とともに、著者の人柄にも触れてみよう。
気鋭のジャーナリストとノンフィクション作家がトークイベント 宮下洋一、河合香織が語る「命」は誰のものなのか
前著『安楽死を遂げるまで』で世界6カ国にわたる安楽死と自殺ほう助の現場を取材した宮下洋一。その続編となる『安楽死を遂げた日本人』の刊行記念イベントが、下北沢の本屋B&Bで行われた。ノンフィクション作家の河合香織を招き、“生”と“死”という対極のテーマを扱う2人が、「命」の当事者とは誰なのかを語り合った。
冒頭で司会者が河合の著書『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』が第18回新潮ドキュメント賞を受賞したことに触れ、この日は同賞の候補作でもあった宮下との恩讐を超えた対談であることを強調すると、会場は祝福の拍手に包まれた。
安楽死に対して中立的な立場の宮下は「欧米は個人主義で、死に対しても自分の意志が通りやすい。日本では死が個人のものではなく、むしろ家族のものであるんじゃないか」と死生観の違いを語る。河合は本書を「前作よりさらに個別の事情を取り上げて生きるとは? 死ぬとは?という問題を描いている」と絶賛し「昔から“畳の上で死にたい”といいますが、その言葉には家族や親しい人に見守られて『ありがとう』、『大好きだよ』と言って死んでいくことも含まれている。主人公の女性はある意味そういう思いをスイスで実現していて、死は自分だけでなく家族のものであるというのをすごく感じました」と感想を述べた。
カリスマ書店員3人が日比谷でトークイベント“マジ絶望”な世の中を生き抜くヒントとは?〈後篇〉
盛岡市のさわや書店を退職し、現在は出版取次会社に勤務する長江貴士が2作目の著書『このままなんとなく、あとウン十年も生きるなんてマジ絶望』(以下、『マジ絶望』)を上梓。刊行を記念したトークイベントが中央区のHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEにて行われた。聞き手は同店店長の花田菜々子と元三省堂書店で現在同店勤務の新井見枝香。Vol.721に掲載しきれなかったエピソードを含め、前篇・後篇に分けてお届けする。
カリスマ書店員3人が日比谷でトークイベント“マジ絶望”な世の中を生き抜くヒントとは?〈前篇〉
盛岡市のさわや書店を退職し、現在は出版取次会社に勤務する長江貴士が2作目の著書『このままなんとなく、あとウン十年も生きるなんてマジ絶望』(以下、『マジ絶望』)を上梓。刊行を記念したトークイベントが中央区のHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEにて行われた。聞き手は同店店長の花田菜々子と元三省堂書店で現在同店勤務の新井見枝香。Vol.721に掲載しきれなかったエピソードを含め、前篇・後篇に分けてお届けする。
イケメンって、なにかね?『くさらないイケメン図鑑 現代ニッポン半世紀を彩った265人』
前著『産まないことは「逃げ」ですか?』で、妊娠・出産問題を赤裸々に綴り話題を呼んだ著者の最新刊。「週刊新潮」誌にて長年イラストも手掛けるテレビ評「TVふうーん録」を連載する著者の鋭い観察眼で、現代日本を代表するイケメン265人を分類・リスト化し、うち100人をイラスト入りで解説している。
しかし、通常のイケメン図鑑の枠には到底収まらないところが著者の真骨頂。まず表紙からして、各イケメンのパーツを組み合わせたモンタージュイケメンである。美女の顔を集めて平均化したからといって絶世の美女になるわけではないのは割と知られた話だが、このイケメンらしき架空の人物をどう評価すればいいのか。本書への向き合い方を揺さぶられる。
そしてイケメンジャンルも「すっぽこ系」という、およそイケメンを論じようとしているとは思えないカテゴリーからスタート。掟破りではあるが、巻末から読み進めるのが従来のイケメン図鑑ではないのか。
目次を兼用したイケメンリストには、イラストで描ききれなかったイケメンたちをひと言で表現。名前しか分からないイケメンは想像するほかない。制作期間2年半を経て産み落とされた本書は、全力でイケメンとはなにかを問いかけてくる。寄藤文平氏が手掛けた一見の価値ありの装丁は、本書を開いてのお楽しみに。