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全く笑えないG20「すし詰め」騒動【鈴木寛の「2020年への篤行録」第70回】

2019.07.08 Vol.720

 6月28、29日に主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪で行われましたが、G20では図らずも会場設営のことが妙な形で話題になりました。

 初日のメインセッションを前に行われたデジタル経済に関する首脳特別イベント。その会議室が狭く、各国首脳たちが企業の会議室にもあるような長机に「すし詰め」状態で座ったシーンが報道されると、SNS上でたちまち話題となりました。

 会場が決まった経緯について、外務省の担当者は産経新聞の取材に対しノーコメントだったそうですが、今回の会場となったインテックス大阪は、大阪市の人工島・咲洲にある西日本最大級の国際展示場でした。G20は、安倍総理肝いりであったことはもちろん、大阪にとっては6年後の万博を見据えた大型国際イベント。外務省も大阪府・大阪市も入念に準備を重ねてこの会場を選んだと思いますが、SNSやメディアの騒ぎは表層的に思えます。

 インテックス大阪の延べ床面積(70,000m2)は、東京ビッグサイト(95,000m2)、幕張メッセ(72,000m2)に次いで国内3番目の規模でした。しかし築34年と老朽化していました。万博準備やIR誘致に伴う再開発により、新しい施設の構想もあるそうですが、中国などアジア各国に行くと、その数倍の規模の施設がありますから、平成の30年で日本はここでもグローバル競争に遅れをとったことがわかるのです。

 今回の騒ぎを見ていると、数年前の国立競技場の建て替えに伴う迷走劇を思い起こします。計画変更は資材高騰などのやむを得ない事情もありましたが、税金が絡むとメディアの論調は「浪費」と決めつけるのがこの国の特徴です。オリンピック後を見据えた投資としてどの程度が適切なのか冷静に分析した報道や解説はほとんどありませんでした。

 計画を作り直した国立競技場にはエアコンがありません。夏場の大会の観戦環境として不安を残すだけではなく、IOC幹部や各国の政府高官などVIPの接遇の拠点として機能するのか、「安物買いの銭失い」になりそうで、大いに懸念を感じます。

 G20の会議場も、多少の投資をしていまの世界標準を意識した施設があれば新たなブランドを醸成できます。トランプ大統領や習近平主席が使った椅子に座れるとなれば、中国人観光客の見学コースにもでき、映画やテレビドラマのロケ地としても貸し出せたでしょう。国際的なイベントを誘致しやすくなります。

 今回の騒動は、浪費と投資の違いがわかる国民、メディアを育成することの必要性を改めて痛感します。「すし詰め」を笑い事で済ませていいのでしょうか。            

G20大阪サミット無事終わる【NEWS HEADLINE】

2019.07.06 Vol.720

 目で見るニュース、気になるキーワードの解説、話題を集めた発言などなど、使えるニュースをよりコンパクトにお届け!!

小池百合子のMOTTAINAI 第15回「6月は日本と世界の鬼門となるか?」

2012.06.11 Vol.555

 そろそろ梅雨入りかと思いきや、早くも台風3号のおでましです。竜巻に襲われたり、雹(票なら大歓迎ですが)に見舞われたりと、気候も政治も不安定極まりない状況が続いています。
 6月は世界の政治のハイライトが目白押しです。
 まず、今通常国会の会期が21日に迫る中、6月18日から開かれるメキシコでのG20に出席するには、15日にも衆院本会議での消費税関連法案の採決を行わなければなりません。
 ましてや、その後、ブラジルでのリオ環境サミットが開かれます。ちなみに、20年前、同じくリオ・デジャネイロで開かれたいわゆる「地球サミット」に世界中のリーダーが参加するなか、出席できなかった主要国はイタリアと日本だけでした。イタリアはそもそも首相の座が空席でした。日本については、当時の宮沢喜一首相が湾岸戦争後の機雷処理に自衛隊を派遣するための法案処理のため、国会を離れられなかったという事情がありました。結果として、日本は地球環境保全に後ろ向きとの印象を残しました。
 今回は、ぜひとも日本を代表して野田総理にはリオに飛んでほしいものです。
 6月16、17日には、私の第二の故郷でもあるエジプトで大統領選の決選投票が行われます。昨年のいわゆる「アラブの春」でムバラク大統領が権力を失い、先日終身刑を宣告されたばかりですが、判決や息子たちへの甘い対応を不服とする国民、なかでもイスラム系の反発は強くなるばかりです。結果として、長い歴史を持つムスリム同胞団をベースとする候補が勝利を収める可能性があります。
 となると、これまで世界の火薬庫といわれる中東において重要なセーフティーネットとなっていたエジプトとイスラエルの平和条約にも影響が出てくるでしょう。首相に世俗主義者を置くなどの配慮があるか、ないかがポイントになりますが、シリア情勢と相まって、中東の不安定化が懸念され、すなわち原油価格などに影響を及ぼします。
 遠い世界の出来事のようですが、原発すべてが停止し、老朽化した火力発電も駆り出す状態にある日本にとっても見逃せません。
 トドメは同じく17日に行われるギリシャの再選挙です。世論調査では8割以上が「ユーロ圏からの離脱は望まない」が、「緊縮財政もイヤ」とのこと。結果次第では、想定外だったユーロからの離脱、旧通貨のドラクマ復活とのシナリオが現実のものとなり、世界経済は大荒れが予測されます。
 6月は日本にとって、世界にとっても鬼門となりそうです。

(自民党衆議院議員)

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