実験は産業医科大学名誉教授の嵐谷奎一氏が監修
日本たばこ(JT)が「加熱式たばこ使用時の空気環境影響調査」を行い、その結果に関する会見を10月2日に開催した。
今回、JTでは実際に営業しているカフェの喫煙エリアで自社の加熱式たばこ、他社の加熱式たばこ、自社の紙巻きたばこの3つを用い、喫煙エリアおよび非喫煙エリアにおける室内空気環境への影響を調査した。
カフェは面積13㎡で喫煙エリア15席、非喫煙エリア13席という通常の大きさ。喫煙エリアは四方を壁とパーテーションで囲われており、境界部には引き戸がある状態。また換気においては3つある換気設備のうち一つを止め、通常の実験では境界風速0.2m/s以上が望ましいとされるところを0.06m/sというあえて過酷な条件を用意。そのなかで先に記した3つのたばこで実験を行った。
粉じん濃度、一酸化炭素濃度、ホルムアルデヒト濃度、アセトアルデヒト濃度といった15項目を測定。その結果、自社の加熱式たばこは喫煙エリア・非喫煙エリアともにすべての成分で使用前・使用後の濃度に大きな変化はなかった。また他社の加熱式たばこは喫煙エリアではPGとニコチンの濃度が上昇したものの、他の成分に関しては使用前・使用後の濃度に大きな変化はなく、非喫煙エリアではすべての成分について使用前・使用後の濃度に大きな変化はなかった。
紙巻きたばこでは喫煙エリアではほとんどの成分で濃度が上昇。非喫煙エリアでは粉じんのみ濃度が上昇した。
実験では加熱式たばこを個室で使用する分には喫煙エリア外の空気環境に影響を及ぼさないという数値が出たことから、会見に出席したJT執行役員 渉外企画室長の福地淳一氏は「加熱式たばこ専用喫煙室の技術的要件として、扉付きの個室であり、かつ一般的な施設に備わる排気設備があれば非喫煙エリアの室内環境に影響を及ぼさない」という見解を示した。
今回の検証については産業医科大学名誉教授の嵐谷奎一氏が監修。会見に同席した嵐谷教授も「調査にあたっては恣意的であってはいけないということを最も重要視した。測定成分の選定において偏りがないように、一般的な環境に存在する成分や健康に影響する成分を紙巻きたばこ、加熱式たばこ同等の観点から選定した。また測定結果の信頼性を担保するために同じ測定を複数回行った。多面的な観点で試験計画を立て、客観的でかつ信頼性の高い実験になったことを認識している」としたうえで「加熱式たばこ使用による室内空気の汚染は少ないと考えている。粉じんと一酸化炭素濃度の上昇は認められなかった。またホルムアルデヒド、アセトアルデヒドともに使用前、使用後を比較したところ、喫煙エリアではほとんど変わらなかった。したがって加熱式たばこの使用により喫煙エリア内の空気汚染は小さいものと思われる。喫煙エリア外、すなわち非喫煙エリアへの影響はさらに小さいと考える」と話した。
JTでは加熱式たばこ使用時の空気環境への影響については、これまでさまざまな実験をしてきたが、今回のように実際のカフェを使ってのものは初めて。
福地氏は「今後もさまざまな試験を実施していきたい。そのなかでやった実験については論文投稿をしていくことが基本。論文投稿をする場合は学会等で査読を受けたうえで投稿することになる。自社実験でも今回の嵐谷先生のように助言、監修をしていただくことで客観性をもってやっていくことを基本的な方針として今後もさまざまな実験をしていきたい」などと話した。