差別、エネルギー、災害、復興、憲法…トラッシュマスターズが作品の題材とするのはこういった現代社会が抱えるさまざまな問題。それらを見る者の魂を揺さぶる重厚な人間ドラマに仕立て上げる。
作・演出の中津留章仁は綿密な取材を重ね、資料を読み込み、自分なりの考え方を確立したうえでそれらの問題にアプローチする。当然そこには中津留の思想と思われるものは顔を出すが、物語は決してそういったものを押し付けるものにはならない。それは登場人物たちの人生の一部分を切り取るのではなく、長いスパンで描くという彼らの手法も大きいと思われる。
多くの作品は物語の端緒となる出来事から、それを経ての数年後の姿も描かれる。長い時間を経ての登場人物たちを取り巻く環境の変化や思想の変遷などを描くことで、前出したような問題は「善と悪」「賛成や反対」という単純な図式ではないことがさらけ出され、観劇後に「それで自分はどう思うのか?」と考えさせられるものとなっている。
今回は台風による水害に苦しむ地方を舞台とした物語。東日本大震災を受け作・演出の中津留が筆を走らせた作品なのだという。
東京公演の他に6月18〜20日に長野・上田、6月29〜30日に宮城・仙台でも公演を行う。